被害届を取り下げてもらうために

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

風俗を利用した際に、風俗店と利用者の間でトラブルが発生する事例が多くあります。

利用者が行った行為によっては、風俗店側に被害届を提出され、逮捕される可能性もあります。

そこで今回の記事では、被害届をすでに提出されている場合の被害届を取り下げてもらう方法について解説していきます。

1 被害届について

被害届とは、警察などの捜査機関へ犯罪被害の事実を申告するための届出書です。

被害届の提出方法は、被害者自身が警察署に行き、被害届の書類に必要事項を記入して提出する方法と被害者が口頭で被害届を提出して警察が内容を聞き取って被害届を代筆する方法もあります。

 

2 被害届と告訴状の違い

⑴加害者への処罰意思が含まれるかどうか

被害届は加害者への処罰を求める意思が含まれず、被害の事実を申告するものであるのに対して、告訴には犯人を処罰してほしいという被害者の意思が含まれているという違いがあります。

 

⑵親告罪の場合

親告罪とは、被害者やその代理人による告訴状がないと処罰できない犯罪のことを指します。

親告罪の場合は、加害者は告訴されない限り逮捕や起訴をされませんので、処罰したいのであれば、告訴をする必要があります。

親告罪の被害を受けた場合には、加害者の処罰を求めるならば被害届を提出するだけでは足りず、捜査機関に告訴する必要があります。

親告罪の例として、名誉毀損罪、器物損壊罪、過失傷害罪などが挙げられます。

一方で、強制わいせつ罪や強制性交等罪、児童買春罪や盗撮などは親告罪ではありません。

親告罪ではないものでも、被害者が告訴することによって加害者を処罰したいという意思が明確になります。

 

⑶捜査機関への義務を果たすかどうか

告訴を受けた捜査機関は告訴調書を作成する義務を負います。また、犯罪事実に関する捜査を尽くした上で、事実に関する書類及び焼こっ物を速やかに検察官へ送付しなければならないとされています。

一方で、被害届の場合、単に犯罪事実を申告するだけの効果しかないので、何らかの義務を負わせるというわけではありません。このように告訴を受理すると捜査機関には一定の義務が生じ、事件を放置することはできないため、捜査を進めてほしい場合には、告訴状を提出する方がいいといえます。

 

3 被害届の取り下げの効果

上で説明したように被害届には、法律上の効果はなく、警察が犯罪事実を知って捜査をするきっかけに過ぎないのです。そのため、被害届が取り下げられたとしても、必要であれば、操作が続く可能性はあり、必ず不起訴になるということもありません。

しかし、被害届が取り下げられたということを考慮して、送検前であれば事件化されなかったり、送検後であったとしても不起訴処分になるケースもあります。

被害届は法的には、処罰を求める意思表示を含間ないということを上で説明しました。しかし、被害者がわざわざ被害届を取り下げるということは、被害者の処罰感情がなくなったということを表します。

 

4 被害届の取り下げ手続き

被害者が被害を取り下げる意思表示として、刑事処分に大きな影響をあたるものですので、書面で被害届の取り下げを申し出る必要があります。

被害届を被害者が取り下げる場合、警察に行きその旨を伝えると、被害届取り下げの書類を渡されます。

そこで、被害者が必要事項を記入し、警察に提出することで被害届が取り下げられます。

また、示談の中で被害届を取り下げる場合、加害者側で被害届の取り下げの書面を準備した上で署名・捺印してもらいそのまま提出することもあります。

 

5 被害届を取り下げてもらう方法

被害届を取り下げてもらうためには示談を成立させる必要があります。

⑴示談とは

示談とは、裁判によらずに和解することをいます。

加害者が被害者に対して、金銭を払う代わりに警察への被害届を出さないと約束するようなケースです。

一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。

そこで、被害者と加害者が損害賠償金の金額や支払方法を決めるための話し合いを行います。

被害者は風俗トラブルによって、どのくらいの精神的損害を負ったのか、怪我をしたなら治療費はいくらなのか、休まなくてはいけなくなったならその分の収入はいくらなのかという認識を合わせていきます。

示談は一度締結すると、原則後から内容を変更することができないというものですので、後から理由をつけて金銭を要求してきたとしても、法律的に支払う必要はなくなります。

通常、風俗トラブルでは、被害者である風俗嬢ではなく、風俗店が示談の交渉を対応することが多いです。

 

⑵示談金

女性スタッフが本番行為や盗撮をされて、精神的ショックを受けた場合、その心の傷を金額に換算したものが慰謝料です。

また、暴行により強引に本番行為に及んだり、争いになり女性スタッフが怪我を負った場合は、治療費や通院費、お仕事を休む必要が出てきて得るはずだった収入が財産的損害となります。

示談では、慰謝料と財産的損害をまとめて示談金として支払うことで、解決を目的とするものです。

 

⑶示談書の内容

示談書は、示談した内容を記載した文書のことで示談が成立したと言う記録を残すものです。

お互いにサインした示談書に不備や不足があっては、今後のトラブルの発生の元になりますので、必ず入れるべき条項というものが存在します。

・トラブルについてお互いに第三者に口外しないことを約束する秘密保持条項

・示談書で定めた以外の債権責務がないことを確認する精算条項

・お互いに連絡や接触しないことを約束する禁止条項

・他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める違約金条項

・被害届を出さないことを約束する条項

・いくらの示談金額をどのような方法でいつまでに支払うのか

・誰とのどのようなトラブルを示談するのか

 

⑷示談する相手

本番行為というトラブルの当事者はお客さんと女性スタッフです。

示談相手はお店ではなく、女性スタッフですので、お店と示談書を交わしても女性スタッフと示談を交わしたことになりません。

そのため、女性スタッフが被害届を警察に提出したり、示談金を別に要求してくることが可能であるということです。

 

⑸示談は弁護士に依頼するべき

加害者本人が示談交渉を対応しようとすると、示談が適切に締結できないリスクがあり、被害届の取り下げに合意してもらえない可能性があります。

示談交渉を加害者本人が行おうとすると、被害者は恐怖心や怒りの感情を持っていますので、示談に応じてもらえなかったり、そもそも連絡が取れないということもあります。

弁護士に依頼することによって、適切な自伝を締結して示談を取り下げてもらえる可能性が高くなります。

 

6 弁護士に依頼するメリット

⑴お店側とのやりとりを任せられる

お店と揉め事を起こしてしまうと、何度も連絡がきたり、自宅に押しかけてこられたりすることがあります。

そうなると私生活への悪影響も及ぼしますし、見た目の怖い男性から恐喝のような発言をされるとかなり恐怖心を感じて、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。

このようなやりとりも弁護士へ依頼すれば、直接自分自身でする必要がなくなり、お店側とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。

恐怖心や後ろめたさからお店側からの連絡を無視し続けていても、精神的にストレスを与えますし、時間が経つにつれ、穏便に解決することが難しくなります。

 

⑵適正な示談を結べる

問題が起きた際に、裁判によらずに、当事者が話し合って解決する方法があります。一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。

自分自身で示談を交渉すれば、問題なく解決できるのではないかとお考えの人もいると思いますが、示談内容・示談金額について効果的な示談を結ばなければ、再び金銭を請求されるなど不利な立場になることもあります。

しかし、弁護士に依頼することによって、弁護士が当事者に代わって、女性スタッフやお店と示談交渉をしてくれます。

そして、弁護士が示談交渉することによって事案や状況によって妥当な示談金額を交渉して、適切な内容で法的に効力のある示談書を作成することができます。

もし、既にお店側が用意した示談書などの書類にサインしてしまっている場合には、事実確認を行い、改めて示談金の減額や今後の揉め事を防止するために交渉します。

お店との話し合いを重ねて相手の同意のもと示談書を締結するため、再要求される事も防止します。

 

⑶不当な請求を拒否できる

弁護士に依頼すると、お店側が金銭などを要求してきた際に、その請求が妥当なものか判断して、場合によっては請求を拒否することができます。

事件の当事者はお店ではなく被害者である女性スタッフであり、お店の請求自体が法的には根拠のないケースが多いです。

また、当事者である女性スタッフからの請求があっても、法外な適切ではない慰謝料などを請求された場合には妥当な金額になるように減額を交渉します。

 

⑷刑事事件になるのを防げる

担当弁護士がご本人に代わってお店側や従業員などと示談交渉を行ったり、警察に働きかけを行ったりすることによって、警察沙汰への発展を防止できる可能性が高まります。

示談交渉を弁護士に依頼すれば、警察に被害届や告訴状を出さないことを条件に加えた示談書を作成します。

そのため、刑事事件になることを防げる可能性が高くなります。

もしお店や従業員が被害届や告訴状を提出して刑事事件になった場合でも、示談が成立していれば、逮捕や起訴または懲役を免れる可能性が高くなります。

万一に、逮捕されてしまった後でも弁護士に早急に示談交渉を成立してもらうことで、送検もしくは起訴される前に早期釈放される可能性が高くなります。

警察や検察というのは、事件の加害者の処分を決める際に、被害者が加害者に対して、どれだけ強く処分してほしいと思っているのかという被害者の処罰感情を考慮しています。

そのために、すでに示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、被害者が加害者に対してそれほど強い処罰を望んでいるわけではないと考慮して、釈放が早くなったり、不起訴処分になったりと刑事裁判を回避できる可能性が非常に高くなります。

起訴されてしまった場合、身体拘束を受けているのであれば、保釈請求を行いますし、執行猶予付き判決を獲得するために示談交渉を行う必要があります。

また、刑事裁判においても、被害者の感情というのは大きく考慮されます。したがって、示談が成立していると分かれば、実刑で刑務所に行かねばならないところが執行猶予になり刑務所に行かずに済んだり、実刑となっても刑期が短くなって刑務所に入る年数が少なくなるケースが多いです。

 

⑸家族や勤務先にバレない

家族や勤務先に風俗トラブルについて、知られてしまうと信用を落としかねません。

それまでのお互いの関係性が崩壊してしまう可能性もあると思います。

しかし、早い段階で弁護士に依頼すれば、代理人としてお店や女性スタッフに対して、本人やその家族、会社に連絡しないように求めます。

それに違反した場合の違約金や処罰を示談書に盛り込むことによって、外部に漏らすことを防ぎます。

自分自身で警告するよりも弁護士の方が抑止力が高いですし、お店によっては弁護士との交渉ごとに慣れている場合もありますので、訴えられるような行動は取らない可能性が高くなります。

そのため、弁護士に依頼することでお店との交渉を代わりにしてくれ家族や勤務先にバレずに解決できる可能性が高くなります。

 

⑹個人情報の流出が防げる

事件を示談交渉する際に、弁護士が代理人として締結する示談書には、お店側が得た個人情報の破棄を要求した上で、悪用や流出を禁止する内容を盛り込みます。

お店を利用した段階で、名前や電話番号などの個人情報がお店側に渡っている事もあると思いますし、免許証や会社の名刺などもお店に要求され、情報が渡っているケースがあります。

これらの返却やコピーを破棄させるようにするため、個人情報の流出を防止できます。

この契約に違反して、お店側が個人情報を流出すれば、名誉毀損などで弁護士が訴えることができます。

この旨をお店側が理解するまで弁護士が説明し、今後の不安がないように徹底します。

 

7 まとめ

以上で、被害届を取り下げてもらう方法について解説してきました。

風俗トラブルにおいて、ご自身や家族が被害届を出されてしまった、逮捕されたという場合は弁護士にご相談ください。

今回の記事が皆さんの今後の行動のお役に立てれば幸いです。

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