本番行為で罰金を請求された場合の対処法

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

風俗を利用した際に、トラブルが多く発生しています。

禁止されているにも関わらず、ハメを外してしまい、本番行為に及んでしまったり、実際には、本番を許容している女性スタッフもいますし、女性スタッフから本番行為を誘い、別途料金をもらったり、次回の指名につなげるようにしているケースも存在します。

風俗嬢の同意があるかないかに関わらず、風俗での本番行為とは基本的に禁止されていることなので、風俗店に罰金を請求されるケースがあります。

今回の記事では、風俗にて本番行為をした場合のリスクや対処法について解説していきます。

1 罰金を請求される

風俗店の説明やホームページには、基本的に本番行為を禁止とする文言が書かれています。

そこには、違反した場合の具体的な処罰が書かれているケースもあります。

しかし、罰金というのは法律上の刑事罰の一種であり、単なる風俗店がお客さんに対して罰金を課すことはできないため、支払う必要はありません。

風俗店の張り紙やホームページで「本番行為した場合に罰金をいただきます」のような文言は、お客さんに対して、本番行為をしないように抑止するための意味合いものです。

しかし、実際に本番行為がお店側の知られてしまうと、注意書きをもとに脅迫じみた言葉で高額な罰金を請求してくるケースがあります。

本番行為の強要により女性スタッフが男性に恐怖心を感じてお店を辞めてしまったり、精神的ストレスを負い休んでしまうと、お店側には損害は生じます。

売り上げ減少にもつながり、女性スタッフを採用する際に広告費等のコストもかかっています。

このような意味では、お店側が本番行為を強要されたことを理由として罰金を請求してくることも一理あります。

しかし、女性スタッフが休んだり、お店を辞めてもいない場合には金銭を要求することは、不当な請求だと言えます。

また、違反行為をした男性の負い目や逮捕されたり、家族にバレるかもしれないという不安な気持ちを利用して、金銭を要求してくる場合もあります。

お店側の脅迫に負けて、一度要求をのんでしまえば、何度も金銭を要求されかねませんので、支払う必要はありません。

2 警察に逮捕されるのか

⑴脅される

確かに、暴力を振るったり脅迫して強引に本番行為を行なったのであれば、強制性交等罪として、警察に逮捕される可能性はあります。

しかし、流れやお互いの同意のもとで本番行為をしたのであれば、強制性交等罪には該当しないので逮捕されることはありません。

通報するであったり、被害届を出すというのはお店側の切り札であるため、その脅しに屈して要求を呑まないようにするべきです。

警察に逮捕されると想像すると不安な気持ちから正常に判断できなくなり、恐怖心からお店側の要求を要求を受け入れてしまう人が多くいるのです。

⑵逮捕されるのか

そこで、実際に風俗店での本番行為は逮捕されるのか。

売春防止法第2条、第3条では、お金や物をもらったり、もらう約束をして、不特定の人と性交を禁止しています。

したがって、女性スタッフと本番行為をすれば

売春防止法違反となり、犯罪行為ということになります。

しかし、売春防止法違反には罰則規定がないため、違法な犯罪ではあるが、警察に逮捕されることはないということになります。

これには、「売春せざるを得ないような状況の人は保護しなければならない」という考えがあるからです。

この法律は日本がまだ豊かではない1956年にできたもので、生きていくために仕方なく体を売る女性を保護するために、罰するのは酷であるという考えがありました。

また、密室内で本番行為があった事を立証するのが困難であることも理由とされています。

女性に売春をあっせんしたり、売春を業とすることは犯罪として逮捕されます。

ただ、本番行為について女性スタッフの同意がなかった場合は、強制性交等罪で犯罪として警察に逮捕される可能性も高くなります。

(強制性交等)

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

引用元:刑法第177

刑法第177条は強姦罪という名称でしたが、平成29年の改正で強制性交等罪に変更になりました。

強制性交等罪が成立するかどうかは、暴行や脅迫の程度によります。

この暴行や脅迫の程度は、最高裁判例で「相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるもの」とされています。

つまり、女性スタッフが抵抗できないくらい、もしくは抵抗するのが非常に難しい程度の暴力や脅迫によって、本番行為を行うと、強制性交等罪が成立するということです。

このような脅迫や暴行の上で、挿入まで至らなかった場合には、未遂罪が成立します。そして、その暴行で女性スタッフが怪我をしたら、刑法第1812項の強姦致傷罪が成立します。

例えば、「サービスの最中に意図せず滑って挿入してしまった」「本番行為をしたいと依頼したところ無視or断られたが、我慢できずに暴行などは一切せずに挿入してしまった」というパターンもよくありますが、強制性交等罪が成立する条件である脅迫や暴行を満たしていないということになりますので、逮捕されることはありません。

しかし、女性スタッフとの合意のもと本番行為に及んだにも関わらず、サービス後に強引に本番行為を強要されたと主張が変わったり、本番行為をしていないのに、挿入されたとお店に報告されたりというケースもあります。

このようなケースでは、冤罪になりかねないですので、本番行為は絶対にしないようにして、女性スタッフが嘘を警察に訴えるような場合には弁護士に相談した方が安心できます。

3 損害賠償を請求される

お客さんの行った本番行為により女性スタッフが怪我をしたり精神的ストレスにより、お店を休むことになったため、損害賠償を払うように要求されたり、女性スタッフの精神的負担により男性恐怖症になったため慰謝料を要求されるケースもあります。

お店や女性スタッフは、さまざまな損害の理由を挙げて、損害賠償金や慰謝料を捲し立てようと請求してきます。

ほとんどの場合では、支払う必要のないものまで必要のない金額まで要求してきますので、言われた通りの要求を受け入れないようにするべきです。

そもそも損害賠償請求とは、相手による債務不履行や不法行為によって損害を受けたときに、その損害についての補償を求めることです。

そして、その損害賠償には2種類ありますのでそれぞれ解説していきます。

⑴ 不法行為による損害賠償

民法709条(不法行為による損害賠償)

「故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」

709条では、わざと又は誤って人に金銭的な損害を与えた場合には、賠償しなくてはならないと書かれています。

例えば、本番行為によって必要となった妊娠検査日や治療費、それらで仕事を休んでいる間に稼げたはずの収入などが該当します。

民法710条(財産以外の損害の賠償)

「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」

710条では、精神的損害、つまり慰謝料として、女性スタッフが精神的にショックを受けた場合には賠償しなければならないということです。

⑵債務不履行による損害賠償

民法415条(債務不履行による損害賠償)

「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」

415条の債務不履行による損害とは、契約関係にあるものの間で、一方が相手に与えた損害を補填することです。

風俗店において、お金を支払うことにより、女性スタッフから性的サービスを受けるという契約が成立していますので、利用規約に「本番行為は禁止」と書かれていれば、本番行為をしないという責務がお客さんに課されています。

そのため、本番行為をすることは債務の本旨に従った履行をしなかったと考えられるため、店からお客への債務不履行による損害賠償請求が認められる余地があります。

⑶風俗店に対しての支払い義務

本番行為によって、女性スタッフが休んだり、やめてしまった場合には、お店の売上は減少しますし、新しい人材を募集するのにも広告費等のコストが発生します。

しかし、判例ではある人が会社の一員に損害を与えたことで、その会社に損失が生じた場合では、その社員が会社組織の中で替えが効かない人物で、なおかつ、経済的にも一体の関係でなければ、加害者への損害賠償は認められないとされています。

つまり、トラブルの被害者がお店の経営者であるようなケースではない限りは、加害者はお店への賠償金の支払い義務はありません。

⑷女性スタッフに対しての支払い義務

女性スタッフの本番行為に対する同意は得ていたものの、怪我を負ったり、避妊具の正しい使い方ができていなかったなど、お客さんに故意や過失があると認められれば、治療費や検査費、休業の間の賠償責任が生じる可能性はあります。

女性スタッフは本番行為について同意しているものの、怪我をしたり、妊娠するかもしれないことまでは許容していたわけではないからです。

しかし、本番行為を許容すること自体ある程度のリスクがあることは女性スタッフも理解しているので、お客さんに過失があっても過失の度合いによって、支払うべき損害賠償の金額が変わりますので、相手の言う通りに支払う必要はありません。

女性スタッフの本番行為に対する同意がないケースでは、状況によりますが、強制性交等罪などが成立する可能性がある問題です。

もし、強制性交等罪に該当するような暴力や脅迫を用いて、本番行為を強要したのであれば、高額な損害賠償を支払わなければならない可能性があります。

そして強制性交等罪は5年以上の有期懲役となり重罪であるため、被害届を出さないことや告訴をしないことを条件に多額の損害賠償金を請求されるケースがあります。

4 示談金を請求される

風俗店でのトラブルでは、犯罪として逮捕される可能性があるため、早く済ませる示談を急ぎ、お店側に有利な条件で示談を成立してしまうことも多いです。

⑴示談の内容

示談書は、示談した内容を記載した文書のことで示談が成立したという記録を残すものです。

お互いにサインした示談書に不備や不足があっては、今後のトラブルの発生の元になりますので、必ず入れる条項というものが存在します。

・トラブルについてお互いに第三者に口外しないことを約束する秘密保持条項

・示談書で定めた以外の債権責務がないことを確認する精算条項

・お互いに連絡や接触しないことを約束する禁止条項

・他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める違約金条項

・被害届を出さないことを約束する条項

・いくらの示談金額をどのような方法でいつまでに支払うのか

・誰とのどのようなトラブルを示談するのか

⑵示談する相手

本番行為というトラブルの当事者はお客さんと女性スタッフです。

示談相手はお店ではなく、女性スタッフですので、お店と示談書を交わしても女性スタッフと示談を交わしたことになりません。

そのため、女性スタッフが被害届を警察に被害届を提出したり、示談金を別に要求してくることが可能であるということです。

5 風俗トラブルを示談するメリット

⑴逮捕されることを防ぐことができる

逮捕前に示談が成立すれば、女性スタッフやお店が警察へ通報したり、被害届を提出することを禁止する約束をすることができます。

もしすでに、被害届が提出されている場合には、被害届を取り下げてもらう条項を示談書に記載して、取り下げてもらいます。

刑事事件になったとしても、すでに示談が成立しているということで、警察が加害者の逮捕のために動く可能性が低くなります。

⑵不起訴・釈放の可能性が高くなる

警察や検察は、犯人の処分を決める際に、被害者がどれだけ加害者を強く処罰してほしいと思っているかという被害者の処罰感情を考慮しています。

そのため、示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、争いがなく、被害者が加害者に対して強い処罰を望んでいるわけではないと考慮され、早期の釈放をされたり、不起訴ということで、刑事裁判にならない可能性が高くなります。

⑶刑事処分が軽くなる可能性が高くなる

刑事裁判においても、被害者の感情が考慮されるため、示談が成立していれば、裁判を受けることになっても、罰金刑になる可能性や執行猶予がつき実刑を免れる可能性も高くなります。

また、実刑判決となっても刑期が短くなる可能性が高まります。

⑷民事訴訟を起こされる可能性が低くなる

示談をしていない場合、刑事裁判での刑罰とは別に、損害賠償を求める民事裁判を起こされて被害者へ金銭を支払うように判決が出る可能性があります。

示談をしておけば、示談書で定めた以外の債権債務が存在しないことを確認する清算条項を記載することによって、示談で定めた内容以外の金銭は支払わなくてもよいので、民事裁判を起こされる可能性がほぼなくなります。

6 まとめ

以上で、風俗で本番行為をしてしまったケースのリスクや罰金を請求された場合の対処法などについて解説しました。

説明してきた通り、風俗店での本番行為には金銭を支払わなければいけない可能性、逮捕されるリスクがあります。

そして、トラブルを起こしてしまった場合には、示談することが重要であり、お店への恐怖心や違法なことをしてしまった後ろめたさから、ご自身だけで適切な示談を締結することは大変困難です。

もし風俗トラブルでお困りごとがございましたら、風俗トラブルに強い弁護士にご相談ください。

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