その場をおさめたくて同意してしまった示談【解決知識】

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

デリヘルを利用して揉め事になってしまった場合、なんとかその場をおさめたくて、示談に同意してサインをしてしまうケースがあります。しかし、本当にこれで問題の解決になったのでしょうか?今回は、相手の言いなりで同意した示談について解説します。

1. 揉め事の原因となる行為

デリヘル特有のトラブルの原因となるNG行為を法律と一緒に見てみましょう。

・本番をした

・盗撮をした

・誤って怪我をさせた

・過剰なサービスをさせた

この様な行為は、店の利用規約などで禁止行為として説明されていますので、行ってしまえば女性キャストや店側と揉め事になる原因となることは明らかです。さらに、法律上でも処罰の対象になる行為ですので、利用の際にはやらないと再度認識してください。

1-1 本番行為

法律第百十八号 売春防止法

第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。

本番を強要すると、罪が重くなります。

刑法第百七十七条 強制性交等罪

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛 ( こう ) 門性交又は口腔 ( くう ) 性交 ( 以下「性交等」という。) をした者は、強制性交等の罪とし、

五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

また、その際に脅迫して本番を強要した場合「脅迫罪」にも問われます。

刑法二二二条 脅迫罪

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

相手との同意がない強要した本番行為は重い犯罪行為ですので、女性キャストには謝罪と誠実な対応が必要となります。

1-2 盗撮をした

盗撮は、未遂に終わったり不用意に女性キャストにカメラを向けただけでも罰せられますので、スマホの扱いには十分注意が必要です。

大阪府迷惑防止条例

(卑わいな行為の禁止)

第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。

二 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。

2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。

一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。

二 前号に掲げるもののほか、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること ( 前項又は第四項の規定に違反する行為を除く。)。

3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。

二 みだりに、姿態を撮影すること。

引用・大阪府 https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001067.html#e000000100

軽犯罪法

第一条 二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

1-3 誤って怪我をさせた

故意はなく、女性キャストへの配慮が欠け誤って怪我をさせてしまった場合は過失傷害が相当するでしょう。

第二百九条 過失傷害

過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

しかし、口論などから揉め事になり、相手に暴行した場合は傷害罪が適応されます。

刑法第二〇四条 傷害罪

人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

1-4 過剰なサービスをさせた

女性キャストに過剰なサービスを強要した場合、強制わいせつ罪と強要罪が成立する可能性があります。また、この際に怪我を負わせてしまうと強制わいせつ致傷罪にも当たる可能性があります。

第百七十六条 強制わいせつ

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。

十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第二二三条 強要

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

第百八十一条 強制わいせつ等致傷

第百七十六条、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。

2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

2. 相手の提示してきた示談

もし、上記の様な行為を行った自覚があれば、揉め事となった場合に負い目を感じることでしょう。そうすると、なんとかその場をおさめたくて、相手の言いなりで誓約書・念書・示談書に同意をしてしまう恐れがあります。この場合、店側が提示してくる示談内容は、店側に有利な内容になっています。また、意図的に不備を作り法的に無効な示談書を作ることで、何度もお金を請求してくることも考えられます。相手は、負い目を感じている利用客から絞れるだけ絞ろうと考えています。ですので、慌てて相手の提示する示談内容に同意してサインすることは大変危険です。もちろん、全くの言いがかりである場合は、相手にせず警察と弁護士に相談してください。

3.脅迫・恐喝の恐れも

もし、相手の示談に応じなかった場合に予想されるのが、脅迫や恐喝です。支払いに応じるまで、執拗な連絡をしてきたり、家に押しかけてくることもあり得ます。昼夜を問わず何度も連絡があれば、精神的に負担ですし、家族や職場にバレてしまう恐れもあるでしょう。

4.もし示談に同意してしまった場合

「家族にバラす」「職場に行くぞ」「どうなっても知らないぞ」などの暴言と共に脅迫を受けて、致し方無く示談書にサインをしてしまった場合はどうなるでしょうか?この様な内容の発言は脅迫に当たりますので店側は脅迫罪を犯したことになります。また、その脅迫の目的が金銭要求ということから恐喝にも相当するでしょう。

刑法二二二条 ( 脅迫罪 )

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法二四九条 ( 恐喝罪 )

人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

ですので、あなたに落ち度がある場合は、この事を交渉材料として、再度、適切な示談の締結に向けて動くことが可能です。そのために、脅迫・恐喝にあった場合は、可能であればやりとりの録音を。難しければ、出来るだけ詳細なメモをとり、証拠として残しておくことが必要です。

5.弁護士を代理人に

法的に有効で適正な示談の締結を急がなくてはなりません。この様な揉め事は時間との勝負です。刑事事件化を避けるため、女性キャストが警察に被害届を出す前に、示談を締結させたいところですので、揉め事のおきた直後、鮮度の高いうちに弁護士に相談してください。暴行などの恐れがあるなど緊急の場合は、即110番通報をしてください。そして、弁護士に至急相談しましょう。同所では、365日24時間即日対応していますので、いつトラブルが起こってもスピード対応いたします。

6.示談の流れと内容

6-1 事実確認

ご相談をいただいた際に、トラブルの詳しい経緯をお聞きします。「いつ」「どこで」「だれと」「どのようなトラブルになったか」を確認します。取り交わしてしまった、誓約書・念書・示談書の内容や請求されたお金の支払いをしたのかなど詳細について伺います。ここでのポイントは、弁護士に隠し事をせず、ありのままを正直に話して頂きたいという点です。「恥ずかしい」「これを言ったら不利になるのでは?」という考えが浮かぶ場合もあるかと思いますが、ここで曖昧に濁した内容を話したり、自分のやましい点について話さない事があると、弁護士も正しい判断ができません。後になって事実と違うことがあった場合、あなたが不利な状況に陥る可能性があります。弁護士には守秘義務がありますので、ご相談いただいた内容は一切外部に漏れることはありません。ましてや家族や職場に連絡するなども絶対にありませんので、安心して全てをお話しください。

6-2 示談交渉

事実確認がすみ次第、状況や緊急性を判断し、すみやかに女性キャストや店側に連絡をします。まず、弁護士があなたの代理人になったことを通知し、今後の連絡は全て代理人である弁護士宛にする事・あなたへの一切の連絡と接触をやめる事・家族や職場に連絡を入れない事を女性キャストや店側に告げます。もし、このことを守らなかった場合、刑事・民事で法的責任追求する方針であることを警告します。そして、脅迫・恐喝によってなされた示談の無効を主張し、再度示談の締結を持ちかけます。双方の言い分などを判断し、妥当な金額で決着を付けれるようにしていきます。相手が主張している慰謝料などの請求が不当であったり支払う義務のないものであれば、これを法的に根拠のない無効のものとして支払いの拒否をすることが出来ます。また、脅迫や恐喝の事実があれば刑事告訴を考えていることを告知し、双方にとってメリットのある和解案を提案します。

6-3 示談締結~示談書の作成~

双方の合意が確認出来たら、示談書の作成に入ります。ここで、盛り込むべき内容として以下の項目を設定します。

【示談書に盛り込むべき項目】

・誰と、いつ、どこで、どのようなトラブルについての示談なのか【 行為・示談相手の特定 】

・示談金の金額・支払いの方法 ( 振込 / 現金書留など )( 一括 / 分割 )・支払期限

・示談金支払い後の取り決め(被害届を出さないことを約束するなど)

・示談書で定めた以外の債権責務がないことを確認し、今後一切請求を行わないという約束【 精算条項 】

・お互いに連絡や接触しないことを約束する【 接触禁止条項 】

・お互い第三者にトラブルの件を口外しないことを約束する【 守秘義務条項 】

・他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める【 違約金条項 】

上記の項目を盛り込むことで、後々のトラブルの発生を防ぐことが出来ます。また、相手に個人情報が渡っている場合も、悪用できないように破棄させ、一切の接触をしないと約束することが出来ます。さらに、警察に被害届を出さないという取り決めができれば、あなたにとって非常にメリットが大きいと言えます。

6-4 示談締結後のアフターケア

示談が成立したら、示談書が渡されますので、数年間は保管する様にしてください。また、今後の生活や風俗トラブルについてのアドバイスをしていきます。もし、女性キャストや店側が示談に盛り込んだ項目の約束を破った場合、すみやかに対応し、あなたの日常生活をバックアップしていきます。

7. まとめ

一度取り交わして成立してしまった示談を取り消すのは難しいことですが、脅迫などの事実があれば不適切な示談だったとして、再度示談交渉することが可能になるでしょう。そして、法的に有効で適切な内容の示談を締結させることで、やっと問題の解決と言えます。そのためには、豊富な法律の知識と交渉経験が必要です。デリヘルトラブルの解決事案の多い同所の弁護士が、お困りのあなたを全力でサポートいたします。

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