【知識】前科がつくとどうなるの?
- コラム
刑事事件に発展して逮捕。まさか自分の身に起こるとは…。もし「前科」がついたらどうなってしまうのか? 今回は、風俗トラブルから逮捕に至り、前科がつくとどうなるのか解説します。
1. デリヘルなどで逮捕になる可能性のある行為
通常、常識的にサービスを受けていれば、トラブルに発展することも少ないでしょう。しかし、思わずしてしまった行為によっては刑事事件になり、逮捕される深刻なケースも少なくありません。デリヘルなどで逮捕につながる行為を確認しましょう。
1-1 本番強要した
本番行為自体、法律上違反になりますが、それに加え、女性キャストの同意を得ずに本番を強要すると「強制性交等罪」に。また、その際に怪我を負わせてしまえば「強制性交等致傷罪」に該当します。
刑法第百七十七条 強制性交等罪
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛 ( こう ) 門性交又は口腔 ( くう ) 性交 ( 以下「性交等」という。) をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法第百八十一条 強制わいせつ等致死傷
第百七十六条、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
また、その際に脅迫して本番を強要した場合「脅迫罪」にも問われます。
刑法二二二条 脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
1-2 暴行した
女性キャストと口論になり、カッとなって、思わず暴行してしまった。同意のない過剰なSMプレイを強要して怪我を負わせた。この様に、相手を故意に怪我をさせると「傷害罪」に当たります。
刑法第二〇四条 傷害罪
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
1-3 盗撮した画像をネットなどで公開 ( もしくは販売 ) した
盗撮した場合、47都道府県の迷惑防止条例と軽犯罪法違反です。例として大阪の条例を確認しましょう。
大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
( 卑わいな行為の禁止 )
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。二 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。二 前号に掲げるもののほか、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること( 前項又は第四項の規定に違反する行為を除く。)。
3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、
次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。
二 みだりに、姿態を撮影すること。
4 何人も、第一項各号又は前項第二号の規定による撮影の目的で、写真機等を人に向け、又は設置してはならない。
もし、盗撮した動画を有償・無償に関わらず、インターネット上で不特定多数が認識できる状態(SNS に投稿も含む)にした場合、刑法一七五条で規定される「わいせつ物頒布罪・わいせつ物陳列罪」が適用されるケースがあり、実際に、サービスの様子を小型カメラで盗撮し、その動画をインターネットで販売して逮捕されたケースがあります。
刑法第百七十五条
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
1-4 未成年と知りながらサービスをさせた
まともな店ではあり得なことですが、悪質な業者では未成年と知りながら18歳未満の未成年を雇っている場合があります。そして、それを知りながらサービスを受けたり、本番行為に及ぶと「強制性交等罪」「青少年保護育成条例」「児童福祉法違反」などに該当します。
大阪府青少年健全育成条例
( 淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止 )
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと ( 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 ( 平成十一年法律第五十二号。以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。) 第二条第二項に該当するものを除く。)。
二 青少年に対し、威迫し、欺き、若しくは困惑させることその他の当該青少年の未成熟に乗じた不当な手段を用い、又は当該青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為又はわいせつな行為を行うこと。
三 青少年に売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又は青少年にこれらの行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
2. 前科とはなに?
裁判で有罪になると、刑事罰 ( 懲役・罰金など ) を受けるだけでなく「前科」がつくことになります。前科とは、過去に刑罰を言い渡されたという経歴が記録として残るものです。検察庁において「前科調書」に記載され、記録保管されます。この前科調書に記載されている情報は、抹消されることはありません。
【前科調書の内容】
・裁判の日
・確定の日
・刑の内容
・言い渡し裁判所
・罪名
・実刑であれば仮釈放の日
・刑執行終了の日など
3. 前科がつくデメリット
有罪判決と刑事罰を受けると、日常生活上どの様な事が起こるのでしょうか?
3-1 仕事を失う
・会社員の場合:勤めている会社を解雇される可能性があります。会社員 ( 労働者 ) の懲戒処分に関する規定が法律にはないため、解雇はその企業ごとの就業規則にしたがって行われます。
・公務員の場合:国家公務員と地方公務員ともに、どちらも禁固刑以上の前科は欠格となることから、失職となります。
・資格のいる職業の場合:公的な資格を必要とする職業 ( 弁護士・公認会計士・教員・保育士・看護師・調理師など ) も、公務員と同じく欠格となるため失職となったり制限を受けたりします。
3-2 就職が難しくなるケースがある
検察が保管する前科調書などに記載の前歴・逮捕歴に関する情報は、一般企業が調べることは出来ませんが、事件の内容によっては実名報道されますので、ネット上に情報が残る可能性が高いです。ですので就職に影響があると言えるでしょう。また、就職活動をする際に提出する履歴書などに賞罰について記載する欄がある場合、前科について記載しないと経歴詐称になることがあります。就職できたとしても経歴詐称が知られると、そのことを理由に懲戒解雇になることもあるでしょう。
3-3 パスポート発給に制限がかかる場合がある
刑の執行を受けるまでや、一定の犯罪で刑に処せられた者に対して、一般旅券を発給しないことができる法律があります。ですので、パスポートを取得しようとしても、発給の制限を受ける可能性があります。また、渡航先の入国許可基準によっては、入国許可されない場合があります。
3-4 結婚と離婚問題
もし、前科を隠して結婚した後に前科が発覚した場合、離婚事由の判断材料となる可能性が大きくなります。
民法第 770 条第 1 項第 5 号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
3-5 再犯時に刑が重くなる
前科のある人が再び罪を犯すと、前科のない人に比べて重い刑事処分を受ける可能性が高くなります。
3-6 ネット上にいつまでも情報が残る
ニュースなどで実名報道されると、当然インターネット上に情報が残ります。ですので、他人に前科を知られる恐れがあります。
4. 前科をつけないために
もし、トラブルになった場合、すみやかに弁護士へ相談してください。弁護士に相談すると以下の可能性を見出すことができます。
・不起訴処分で前科を回避
・被害者との示談を成立させ起訴を防ぐ
起訴をされなければ、前科がつくことはありません。ですので、前科を回避する行動を起こさなくてはなりません。風俗トラブルは、時間との勝負です。事件の鮮度が高いうちに先手を打てば、不起訴などにより前科がつくことを回避できます。起訴されれば高確率で有罪となり、前科がついてしまうでしょう。そうすると人生計画も破綻してしまう恐れがあります。早期解決の知識として、「トラブルになったら弁護士に」と思ってください。
5. まとめ
今回は、風俗トラブルで起訴される可能性のある行動と前科について解説しました。この記事を読んで怖くなってしまう方もいると思いますが、あくまで常識外の行為をした場合に限ることですので、安心してください。ただし、もしトラブルになった場合は、迷わず・すみやかに・鮮度の高いうちに、風俗トラブルに強い同所の弁護士へご相談ください。
関連キーワード