執行猶予とは
- コラム
事件のニュースで「執行猶予」という言葉をよく耳にすると思いますが、そもそも、刑の執行を猶予するという文字通りの意味以上にどんな意味合いがあるのかというのは、一般には知られていない点も多いです。今回の記事で執行猶予についてわかりやすく解説していきます。
1 執行猶予とは
刑事裁判において、有罪判決が言い渡されると、その判決の内容に従い、刑罰が執行されることになりますが、
執行猶予とは、被告人の状況を踏まえ社会内での更生が期待できる場合に、刑の執行を猶予する制度です。
執行猶予付きの懲役刑が言い渡されていた場合において、罪を犯すことなく執行猶予の期間が経過し、刑の執行を免除されれば、刑務所に行く必要はなくなります。
例えば、「懲役2年執行猶予4年」という有罪判決の場合、執行猶予期間中の4年間、犯罪を犯すことがなければ、刑は執行されないまま免除されます。
執行猶予は、加害者が更生し社会復帰する機会を奪わないために存在します。
犯罪が軽微であり、本人も深く反省しているようなケースでも一律に刑務所へ収容することは、逆に社会復帰を困難にしてしまうおそれがあるためです。
2 執行猶予の期間
執行猶予の期間については、1年から5年と定められています。
3 執行猶予がつく条件
刑法25条では刑の全部の執行猶予がつけることができるものを以下のように定められています。
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
引用元:刑法第二十五条
⑴以下のいずれかを満たす
○禁錮以上の刑を受けたことがない
○禁錮以上の刑を受けたことがあっても執行後、もしくは免除後5年以内に禁錮以上の刑を受けていない
⑵刑が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
上記を前提として、刑が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金で収まっていることが必要です。
⑶その他
社会での更生が可能であると主張するには、再犯のおそれがないことを説得的に主張していくために、自らが行った罪を認め深く反省している態度を示す必要があります。
被害者がいる場合には、被害者に謝罪のうえで示談を成立させることができれば、執行猶予が得られる可能性は高くなると考えられます。
3 執行猶予のメリット
懲役刑の言い渡しを受けてしまうと、原則として判決確定後に刑務所に行かなければならないことになりますが、執行猶予がつけられた場合、保釈が認められておらず身体拘束が継続していた場合でも、判決が言い渡された時点で身体拘束は解除され、すぐに日常生活に戻ることができ、住居の変更や旅行なども自由に行えます。
また、実刑判決が言い渡されると、当然ながら服役期間中は職場への出勤もできなくなりますので、職場としては解雇を選択せざるを得なくなると考えられますが、執行猶予が付されれば、普段どおり出勤もできますので、懲戒処分を避けられる可能性を上げることにもつながります。
4 まとめ
以上、執行猶予について解説しました。執行猶予付き判決と実刑判決では、その後の生活に与える影響が変わってきます。
ご自身やご家族が風俗トラブルから刑事事件に発展してしまい、執行猶予をなんとか獲得したいという場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
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