禁止行為の解決方法|風俗揉め事が起こった時に
- コラム
風俗トラブル が起こった時に…風俗の揉め事解決方法
ファッションヘルス、デリバリーヘルス、ホテルヘルス、ソープランドなどといった性的サービスを提供する、性風俗店は全国各地に存在し、日々多くの方が利用しています。最近では、主にマンションの一室で男性向けに鼠径部を中心にマッサージを行うことを内容とする、メンズエステ(マンションエステ、マンション型エステともいいます。)を利用する方も増えています。
こうした性風俗店やメンズエステを利用した際に、予期せぬトラブルに巻き込まれてしまう方が後を絶ちません。
この記事では、そうした「風俗トラブル」が起こったときに、ご自身で解決するための方法を解説します。
1.そもそも 風俗の揉め事 って何?
風俗トラブルに明確な定義は特にありませんが、一般には、性風俗店やメンズエステ店との間で起こったトラブルという意味で用いられることが多いです。
実際にトラブルに発展することが多いのは、①デリバリーヘルス、②ホテルヘルス、③メンズエステを利用した際にトラブルに巻き込まれるケースです。
これらのお店でトラブルが発生しやすい理由としては、お店のスタッフがいない密室で女性と二人きりになるため、欲情して理性が働かなくなったり、盗撮など良からぬことを企てたりしやすくなる点が考えられます。なお、デリバリーヘルス店との間で起こったトラブルのことを、特にデリヘルトラブルと呼ぶ場合があります。
このように、風俗トラブルに明確な定義はないのですが、この記事では、便宜上、性風俗店やメンズエステ店との間で起こったトラブルのことを総称して風俗トラブルといいます。
2.よくある 風俗トラブル のパターン
一口に風俗トラブルといっても、実際には様々な内容のトラブルがあります。
ここでは、代表的な風俗トラブルのパターンと各トラブルに対する法的な評価を取り上げます。
⑴ 本番行為・本番(本番トラブル)
ア 本番行為・本番とは?
「本番行為」や「本番」という言葉は性風俗業界における俗語ですが、その意味は「性交」と同じです。つまり、本番行為とは、男女が性器を結合させる行為をいいます。
女性キャストと本番行為を行ったことから生じるトラブルのことを、特に本番トラブルという場合もあります。本番トラブルは風俗トラブルの中でも最も多いトラブルであり、実際にも弊所に問い合わせのあるケースの約60%が、この本番トラブルです。
イ よくある本番トラブル
よくある本番トラブルとして、以下の類型が挙げられます。
① 素股中に挿入してしまったケース
② 無理やり押さえつけるなどの暴行を加えて挿入してしまったケース
③ 女性キャストと本番行為を行うことについて明確に合意をしたうえで挿入してしまったケース
④ 女性キャストと本番行為を行うことについて明確に合意をしていないにもかかわらず、女性キャストが本番を行うことについて同意していると考えて(勘違いして)挿入してしまったケース
ウ 本番行為の刑事責任・民事責任
㋐ 刑事責任について
刑法第177条前段は、強制性交等罪の罪として、以下のとおり規定しています。なお、既遂だけでなく未遂も処罰されます(刑法第180条)。
「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。」
上記の「暴行又は脅迫」や「性交等」の意味についての詳細な説明は割愛しますが、先程の、①素股中に挿入してしまったケース、②無理やり押さえつけるなどして挿入してしまったケース、④女性キャストと本番行為を行うことについて明確な合意がないにもかかわらず、女性キャストが本番を行うことについて同意していると考えて(勘違いして)挿入してしまったケースについては、強制性交等既遂罪に該当する可能性があります。また、本番までには至らなかったものの、たとえば性交を行う目的で女性キャストを押さえつけたが、激しい抵抗に遭い、結局本番まで至らなかったようなケースでは、強制性交等未遂罪が成立する可能性があります。
反対に、先程の、③女性キャストと本番行為を行うことについて明確に合意をしたうえで挿入してしまったケースについては、女性キャストの同意がある以上、当然犯罪は成立しません。
つまり、女性キャストの同意なく、性交を行ったり、あるいは性交を行おうとしたりした場合には、強制性交等罪(あるいは同未遂罪)に問われる可能性があります。
㋑ 民事責任について
強制性交等罪(あるいは同未遂罪)に該当する行為を行った場合、女性キャストに対し、女性キャストの性的自由を侵害するものとして民事上違法と評価され、慰謝料、治療費、通院費、休業損害、弁護士費用といった損害賠償を支払う義務を負う可能性があります。
また、女性キャストだけでなくお店に対しても、たとえば、サービスの提供を受ける前に、本番行為を行わないことを誓約し、もし本番行為を行った場合には違約金として一定の金員を支払う旨の合意をしていたときや、本番行為によって女性キャストが出勤できなくなったときには、お店に対しても損害賠償を支払う義務を負う可能性があります。
⑵ 盗撮行為(盗撮トラブル)
ア 盗撮行為とは?
盗撮とは、みだりに姿態を撮影することをいい、女性キャストの姿態あるいはサービス利用中の様子を撮影したことから生じるトラブルを、特に盗撮トラブルという場合があります。
盗撮行為の典型例としては、スマートフォンの動画撮影アプリを撮影状態中にしたうえで、鞄やスーツのポケットに忍ばせて、女性キャストの姿態やサービス利用中の様子を撮影するというものですが、最近ではペン型のカメラを用いるケースが多いです。
盗撮トラブルは本番トラブルに次いで多く、実際にも弊所に問い合わせのあるケースの約30%が、この盗撮トラブルです。
イ 盗撮行為の刑事責任・民事責任
㋐ 刑事責任について
盗撮行為は、以下のとおり、迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反、建造物侵入罪に問われる可能性があります。
㈠ 迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もつて都民生活の平穏を保持すること」を目的とする各都道府県が定めた条例をいいます。簡単に言うと、各都道府県が定めた内容の「迷惑行為」を規制することを内容とするルールのことです。
盗撮行為も、当然「迷惑行為」に該当するので、一部の都道府県を除き、迷惑防止条例で規制対象とされています。
たとえば、大阪府の場合には、以下のような規定となっています。
「何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。」(第6条3項)
一 (略)
二 みだりに、姿態を撮影すること。
「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」
一 第六条第一項各号又は第三項第二号の規定に違反して撮影した者
二 (略)
そして、ビジネスホテル、ラブホテル、マンションの一室、店舗型風俗店のプレイルームも、上記の「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」に該当します。
つまり、盗撮行為は、迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
㈡ 軽犯罪法違反
軽犯罪法第1条は「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。」とした上で、同条23号において、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」と定めています。
そして、「ひそかにのぞき見た」という行為には、単に目視する場合だけでなく、カメラやスマホなどの機器を用いて盗撮することも含まれると考えられています。
つまり、盗撮行為は、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。
㈢ 建造物侵入罪
刑法第130条は、建造物等侵入罪として、以下のように規定しています。
「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」
上記の「侵入」とは、「住所や建造物などの管理者の意思に反する立ち入り」をいうと考えられていますが、盗撮行為を目的とする立ち入りも当然管理者の意思に反するものといえますし、盗撮行為を目的とした立ち入りには正当な理由も認められないでしょう。
つまり、盗撮行為を目的とした店舗型風俗店、マンションの一室への立入行為は、建造物侵入罪に問われる可能性があります。
㋑ 民事責任について
盗撮行為を行った場合、女性キャストに対し、女性キャストの肖像権・プライバシー権を侵害するものとして民事上違法と評価され、慰謝料などの損害賠償を支払う義務を負う可能性があります。
また、女性キャストだけでなくお店に対しても、たとえば、サービスの提供を受ける前に、盗撮行為を行わないことを誓約し、もし盗撮行為を行った場合には違約金として一定の金員を支払う旨の合意をしていたときには、お店に対しても損害賠償を支払う義務を負う可能性があります。
⑶ その他の 風俗トラブル
ア お触り・キスなど
刑法第176条前段は、強制わいせつ罪として、以下のように規定しています。なお、既遂だけでなく未遂も処罰されます(刑法第180条)。
「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。
上記の「暴行又は脅迫」や「わいせつ」の意味についての詳細な説明は割愛しますが、簡単にいうと、相手方の同意がないのに、キスやお触りといった、「性交等」以外の態様の性的行為を行ったときに成立する犯罪です。風俗トラブルで多いのは、メンズエステを利用した際に、女性キャストにキスをしたり、女性キャストの胸や陰部を触ったりするケースです。
お触りやキスなどについては、サービス内容に含まれていない以上、女性キャストの同意がない限り、強制わいせつ罪に問われる可能性があります。また、民事上も違法と評価され、女性キャストやお店に対し、損害賠償を支払う義務義務を負う可能性があります。
イ 盗聴行為(盗聴トラブル)
盗聴トラブルとは、女性キャストの同意を得ずに、女性キャストとのやりとりをスマートフォンに搭載されているアプリやボイスレコーダーを用いて録音することによって起こるトラブルです。
盗聴(正確には、「秘密録音」といいますが、この記事では便宜上、「盗聴」と言います。)それ自体を取り締まる法律の規定はないため、盗聴それ自体は犯罪には該当しません。
つまり、たとえ性風俗店あるいはメンズエステ店において盗聴を行ったとしても、盗聴それ自体を理由とした刑事上の責任を追及されることはありません。ただし、女性キャストのプライバシー権を侵害するものとして民事上違法と評価され、女性キャストやお店に対し、損害賠償を支払う義務を負う可能性は残ります。
ウ 妊娠詐欺(妊娠トラブル)
これは、いわゆる「妊娠詐欺」と呼ばれるケースです。
たとえば本番行為を行った女性キャストと連絡先を交換した後、実際には妊娠した事実はないにもかかわらず、女性キャストから「妊娠したので中絶費用を支払ってほしい。」、「しばらく仕事を休む必要があることから、その間の生活費を支払ってほしい。」、「もし支払ってくれないのなら、本番行為を行ったことをお店に言わないといけなくなる。」などと言われ、金員を要求されるケースがこれに該当します。
仮に女性キャストと合意の上で本番行為を行った場合、刑事上も民事上も違法ではないので、刑事責任を追及されるリスクがないことはもちろん、中絶費用や休業補償も支払う義務はありません。つまり、合意の上での本番行為は違法ではありません。
むしろ、妊娠した事実がないにもかかわらず、上記のような形で金員を要求することは、女性キャストの行為自体が詐欺罪あるいは詐欺未遂罪に該当し、状況次第では恐喝罪あるいは恐喝未遂罪にも該当する可能性があります。
3. 風俗トラブル によって生じるリスク
後述する、「風俗トラブルの解決方法」を実践するにあたっては、風俗トラブルによってどのようなリスクが生じる可能性があるかを理解しておく必要があります。そこで、以下では、風俗トラブルによって生じるリスクを説明します。
⑴ 警察沙汰に発展するリスク
前述したように、女性キャストの同意のない本番行為、お触りなどのわいせつな行為、盗撮行為についてはそれぞれ犯罪が成立する可能性があります。犯罪が成立する可能性があるということは、警察が捜査を開始するリスクがあるということ、つまり警察沙汰に発展するリスクがあるということです。
なお、女性キャストが本番行為を行うことについて明確に合意をしていたときであっても、本番後になって女性キャストが合意の存在を否定して金員の支払いを要求するケースも多く存在し、金員の支払いを拒否された女性キャストが強制性交等罪などで警察に被害届を提出するケースもあるので注意が必要です。
仮に警察が捜査を開始すると、逮捕される可能性もゼロとは言い切れず、逮捕までされなくても在宅事件として捜査が進み、最終的に起訴(=刑事裁判へと発展)されるケースもあります。起訴後、有罪の判決が出た場合には、たとえ執行猶予が付いたとしても前科がつくことになりますし、執行猶予がつかなければ刑務所に服役する可能性もあります。
⑵ 自宅や職場に連絡・押しかけられるリスク
自宅でデリヘルを利用したケースやトラブル発生後にお店担当者に運転免許証・健康保険証の控えを取られたケースなどでは、お店側に自宅や職場を把握されています。
こうしたケースにおいて、お店側からの連絡を無視し続けていると、自宅や職場に連絡・押しかけられたりすることがあります。また、示談金額などの示談条件で折り合いがつかないときなどに、たとえば「ご家族の方(あるいは上司の方)ともお話させていただきます。」などと言ってお店側が求める条件でまとめるために心理的プレッシャーをかけてくるケースも見受けられます。
⑶ 法外な金員を支払わされるリスク
通常の示談交渉の場合には、仮に裁判に発展した場合に判決で認容される予想金額や裁判に要する労力・費用などを踏まえたうえで示談金額の交渉が行われます。
しかし、風俗トラブルのケースでは、お店側が一方的に金額(=通常、裁判では認められないような金額)を提示し、お店側の提示を受け入れるか否かの二択を迫られることが往々にしてあります。仮にお店側の要求を受け入れてしますと、本来なら支払う必要のないと考えられる金員まで支払うはめになってしまいます。
⑷ 個人情報を流出・悪用されるリスク
性風俗店やメンズエステを利用する際には、携帯電話番号を知られることがほとんどです。また、トラブル発生後に、お店関係者から運転免許証や健康保険証の控えを取られた場合には、氏名、住所、生年月日、勤務先などといった個人情報も把握されることになります。
風俗トラブルが起こると、こうした個人情報をお店側がネット上で流出・悪用する可能性が高くなります。
4. 風俗トラブル が起こったときの解決方法
⑴ ステップ1~方針の選択~
風俗トラブルが生じたら、まずは今後の方針を選択する必要があります。今後の方針というのは、大きく分けると、①示談交渉を行うか、②お店側からの要求・連絡を突っぱねるか、です。
そして、今後の方針を選択するにあたっては、以下の2点から分析・検討する必要があります。
① ご自身が行った行為が刑事上・民事上違法となるかどうか、つまり、刑事上・民事上の責任を 追及される可能性とその程度
② ご自身に降りかかるリスクの内容、リスクが発生する可能性を分析・検討
つまり、①ご自身が行った行為の法的な評価と、②今後生じ得るリスクの内容及びその可能性を分析・検討することが、今後の方針を選択するうえで重要となります。
風俗トラブルといっても様々なケースが考えられますが、たとえば、抵抗する女性キャストを押さえつけるなどして無理やり本番行為を行ったケースの場合、当然、刑事上も民事上も違法と評価されることになるでしょうし、女性キャストやお店側もただでは終わらせないと考えるのが通常なので、徹底的に責任を追及する可能性が高く、そうすると、証拠の存在や内容にもよりますが、実際にそれらの責任を追及してきた場合には前述したようなリスクが顕在化する可能性も高いといえるでしょう。このようなケースでは、そうしたリスクを回避するために、お店側と示談を行う方針を立てた方がいいことがほとんどだと思われます。
反対に、たとえば、盗聴トラブルのケースの場合、警察沙汰に発展するリスクは皆無に等しいうえ、民事上も慰謝料の金額は伸びないことがほとんどであることから、相対的にお店側と示談を行う必要性は低いと考えられ、事が大きくなるまで放置しておくという選択肢も十分に考慮に値するといえます。ただし、たとえ法律的には刑事上・民事上の責任が発生しないようなときでも、たとえば、お店側が自宅や職場に押しかけるなどと脅してきているようなケースの場合、連絡を無視し続けていると本当に押しかけてくる可能性もあります。そのような不当な要求をされているときには、たとえば、当該要求には応じられないこと及び場合によっては警察への通報など然るべく措置を採らざるを得ないことを伝え、毅然とした対応を採るといいでしょう。
以上のとおり、今後の方針を検討するうえでは、①ご自身が行った行為の法的な評価、②今後生じ得るリスクの内容及びその可能性を分析することが重要となりますが、これらの分析には法律の知識が必要となるので、一般の方では難しいかもしれません。必要に応じて、法律の専門家である弁護士の見解を求めることをおすすめいたします。
⑵ ステップ2~示談交渉の開始~
今後の方針として示談交渉を行うことを選択した場合、基本的には女性キャストではなくお店の責任者が交渉の窓口になるのがほとんどです。
示談交渉を開始する際には、以下の点に留意しましょう。
ア 女性キャストの出勤予定等の証拠化
まず、示談交渉を開始する前に、お店のホームページなどから女性キャストの出勤情報や写メ日記やツイッターなどが更新されているかどうかを確認し、もしトラブルが発生した後に出勤情報が掲載されていたり、更新がされていたりした場合には、該当ページをスクリーンショットするなどして保存(=証拠化)しておくべきです。このようにしておくことによって、後日、示談金の減額や休業補償分の請求をブロックできたり、刑事事件化のリスクを回避できたりする可能性が高くなります。
イ 交渉の窓口となる者の情報の確認
示談交渉を行うときは、最初に、女性キャストの連絡窓口(=代理人)となる者の氏名と地位(店長、エリアマネージャーなど)を確認しておきましょう。これは、後日、女性キャストを代理する権限がなかったと主張され、紛争が蒸し返されてしまうことを抑止するためです。特に、女性キャストだけでなく、お店側とも示談を行う場合には、連絡窓口となる人物にお店を代表する権限があるかどうかは非常に重要となります。
ウ 謝罪の意思やこちらの意向をしっかりと伝える
今後の示談交渉を円滑に進めるためにも、まずはご自身が行ったことによって女性キャストやお店に迷惑をかけてしまったことに対し、一言謝罪の意を述べるとともに、話し合いによる穏便な解決に向けて誠実に対応する意向であることを伝えましょう。
その上で、たとえば、示談が成立した場合には示談書を取り交わしてもらうこと、連絡方法はショートメッセージにしてもらうことなど、こちらが要求した事項についてはきちんとお店側に伝えることが重要です。
エ 毅然とした態度で交渉に臨む
示談交渉にあたっては、毅然とした態度で交渉に臨むことが必要です。お店側との示談交渉の際には、罵声を浴びせられたり、脅迫めいたことを言われたりするなどして、ときに恐怖心を覚えることもあるかもしれません。しかし、ご自身が怯えていることを察知されると、過剰な要求をされるリスクが高まります。ですので、示談交渉にあたっては、毅然とした態度で交渉に臨むことが必要です。回答期限を設定してそれを遵守することを約束し、実際にそれを遵守するなどこちらが誠実な対応をとれば、お店側もへたなことはしてこないことがほとんどです。
⑶ ステップ3~示談条件の交渉~
どのような内容の示談条件を定めるかについては、ケースによっても様々です。ここでは、示談条件の中でも最も重要と考えられる示談金額について解説をしたいと思います。
示談金額を決めるにあたり、相場の金額を知りたいという方が多いです。お店側から、たとえば「100万円」というように具体的な金額の提示がある場合はともかく、特に具体的な金額の提示がなく、むしろ「誠意ある提示をしてほしい。」などと言われるケースもよくあります。そうしたときには、相場がいくらなのかを知りたくなるのは自然なことです。
しかし、示談金の金額は、あくまでも当事者同士が合意した金額で決まります。風俗トラブルのうち本番行為を行ったケースでも、女性キャストが数万円で示談に応じた場合もあれば、100万円でも示談に応じなかったというケースもあります。
このように、当事者同士が納得できる金額については、当事者や事案によっても異なるので、そういう意味では相場というのはありません。
もっとも、過去に弊所が扱った風俗トラブルの事例では、概ね以下の金額で示談がまとまる傾向がありますので、ご参考ください。
・本番トラブル…30万円~50万円
・盗撮トラブル…10万円~20万円
・お触り・キスなど…10万円~30万円
・盗聴トラブル…1万円~10万円
⑷ ステップ4~示談書の取り交わし~
示談条件がまとまったとしても、以下の理由から、示談書を取り交わした上で示談金を支払う必要があります。
・ 紛争の蒸し返しが生じる可能性がある
・ 刑事告訴をされるリスクが残る
もっとも、仮に示談書を取り交わしたとしても、示談書の内容がしっかりしたものでなければ全く意味がありません。どのような条項を示談書に置くかどうかについてもケースバイケースなのですが、ここでは最低限押さえておきたい条項について解説します。なお、示談書の表題は、「示談書」でなくても、たとえば「合意書」や「和解書」などでも問題ありません。大事なのは、表題よりも個々の条項となります。
ア 当事者の特定
そもそも示談書というのは、ある特定の人とある特定の人が示談をした事実及び示談の内容を書面という形で証拠として残しておくために作成されます。もし示談書の記載から、誰と誰との間で示談が成立したのかが読み取ることができないのであれば、せっかく示談書を取り交わしても意味がありません。ですので、示談書には、示談の当事者が誰かが分かるよう、しっかりと示談当事者を特定するようにしましょう。
イ 事件の特定
たとえば以下のように、示談の対象となる事件を具体的に特定するようにしましょう。
『令和〇年〇月〇日午後〇時ころ、○○県〇〇市〇〇町〇〇番所在のホテル「〇〇〇」において起こったトラブルの件について・・・』
理論的には同じ当事者の間でも複数の事件が生じていることがあり、もしこの記載が不十分だと、いったいどの事件について示談をしたのかが不明確となり、場合によっては示談をしていないと評価されるリスクもあります。
ウ 示談金額・支払方法・支払期限
当然、示談金額は正確に記載する必要があります。
また、示談金額だけでなく、示談金の支払方法や支払期限についても、後日のトラブルを防止するため、しっかりと記載しなければなりません。なお、示談書の取り交わしと同時に示談金の授受を行う場合には、たとえば「令和〇年〇月〇日、現金にて受領した」という内容の条項を置くか、あるいは受領証を発行してもらうようにする必要があります。
エ 宥恕条項
宥恕条項とは、たとえば、「示談金が支払わることを条件として、○○の刑事処罰を求めない。」など、被害者が加害者の刑事責任を求めないことを約束する条項をいいます。宥恕条項がないと、民事的には解決しても、刑事的には解決していないということなり、今後刑事責任を追及されるリスクが残ってしまうことから、必ず入れるようにしましょう。
オ 清算条項
清算条項とは、たとえば、「本件に関しては、〇〇と〇〇の間に、名目の如何を問わず、何らの債権債務がないことを相互に確認する。」というように、示談書に記載された義務以外の義務はないことを確認するための条項です。清算条項がないと、後日に再度、金員の支払いを要求され、紛争が蒸し返されるおそれがあるので、必ず入れるようにしましょう。
5.風俗トラブルを弁護士に依頼するメリット
これまで風俗トラブルの解決方法を解説してきました。しかし実際にご自身で上記を実践することは困難なケースもあるかと思われます。
そのようなときには、一度弁護士に相談することをおすすめします。以下では、風俗トラブルを弁護士に依頼するメリットについてご説明します。なお、風俗トラブルを弁護士に依頼する場合の弁護士費用の相場としては、ご依頼する弁護士や事案の内容によっても異なりますが、着手金・成功報酬金などを合わせた合計で60万円前後と考えられます。
⑴ 示談交渉に伴う負担・ストレスからの解放
お店側と示談交渉を行うのは、時間も労力も使いますし、相当なストレスを伴うことも多いです。
示談交渉を弁護士に依頼すれば、弁護士がすべてお店側と連絡を取り合ってくれますので、示談交渉に伴う負担やストレスから解放されます。
⑵ 警察沙汰への発展を防止できる
一般の方よりも交渉力に長けている弁護士が示談交渉を行うことにより、示談がまとまる可能性が高くなり、ひいては警察沙汰への発展を防ぐ可能性が高くなります。
⑶ 家族や勤務先などに知られずに済む
弁護士が交渉の矢面に立ち、依頼者及びその関係者への連絡をしないよう要求することにより、お店側から弁護士以外の者への連絡・接触をなくすことができ、ひいてはご家族や勤務先などにトラブルのことを知られずに済むことがほとんどです。
⑷ 示談金額を減額できる可能性が高くなる
弁護士は示談交渉のエキスパートであるため、弁護士がご本人に代わって示談交渉を行った場合、ご本人がご自身で示談交渉する場合よりも低い金額で示談がまとまる可能性が高くなります。
⑸ 紛争の蒸し返しを防止できる
弁護士がご本人に代わってお店側と示談交渉を行って示談がまとまった場合、法的に再度の請求を阻止する内容の示談書を取り交わすので、再び金銭の支払いを請求してくるおそれはなく、紛争の蒸し返しを防止できます。
⑹ 個人情報の流出・悪用を防止できる
弁護士がご本人に代わってお店側と示談を交わす際には、お店が保有しているご本人の個人情報を破棄するように求めます。実際にも、弁護士が介入した事案ではお店側がご本人の個人情報を流出・悪用することはほとんどないので、弁護士が介入することによって、個人情報の流出・悪用を防止できる可能性が高くなるといえます。
6.まとめ
これまで主に風俗トラブルの解決方法を解説しましたが、 風俗トラブル を自力で解決しようとすることは、心身ともに相当程度の労力を使いますし、一定程度の法的な知識も必要となることがお分かりかと思います。
一方で、風俗トラブルの解決を弁護士にご依頼する場合には、弁護士に全て一任できるものの、高額な費用がかかります。
この記事でまとめた事項を参考にしてもなお、ご自身で解決することが難しいとご判断される場合には、一度弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
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