弁護士なしでの示談のリスク
- コラム
風俗トラブルにおいて、示談を成立することは非常に重要ですが、自分自身で対応しようと考えていたり、どのように示談していいかわからないというお悩みを抱えていませんか。
今回の記事では、風俗トラブルを弁護士に相談せずにご自身で示談しようとするリスクについて解説していきます。
1 示談とは
示談とは、裁判によらずに和解することをいます。
加害者が被害者に対して、金銭を払う代わりに警察への被害届を出さないと約束するようなケースです。
一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。
そこで、被害者と加害者が損害賠償金の金額や支払方法を決めるための話し合いを行います。
被害者は風俗トラブルによって、どのくらいの精神的損害を負ったのか、怪我をしたなら治療費はいくらなのか、休まなくてはいけなくなったならその分の収入はいくらなのかという認識を合わせていきます。
示談は一度締結すると、原則後から内容を変更することができないというものですので、後から理由をつけて金銭を要求してきたとしても、法律的に支払う必要はなくなります。
通常、風俗トラブルでは、被害者である風俗嬢ではなく、風俗店が示談の交渉を対応することが多いです。
⑴示談金とは
女性スタッフが本番行為や盗撮をされて、精神的ショックを受けた場合、その心の傷を金額に換算したものが慰謝料です。
また、暴行により強引に本番行為に及んだり、争いになり女性スタッフが怪我を負った場合は、治療費や通院費、お仕事を休む必要が出てきて得るはずだった収入が財産的損害となります。
示談では、慰謝料と財産的損害をまとめて示談金として支払うことで、解決を目的とするものです。
⑵示談書の内容
示談書は、示談した内容を記載した文書のことで示談が成立したと言う記録を残すものです。
お互いにサインした示談書に不備や不足があっては、今後のトラブルの発生の元になりますので、必ず入れるべき条項というものが存在します。
・トラブルについてお互いに第三者に口外しないことを約束する秘密保持条項
・示談書で定めた以外の債権責務がないことを確認する精算条項
・お互いに連絡や接触しないことを約束する禁止条項
・他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める違約金条項
・被害届を出さないことを約束する条項
・いくらの示談金額をどのような方法でいつまでに支払うのか
・誰とのどのようなトラブルを示談するのか
⑶示談する相手
本番行為というトラブルの当事者はお客さんと女性スタッフです。
示談相手はお店ではなく、女性スタッフですので、お店と示談書を交わしても女性スタッフと示談を交わしたことになりません。
そのため、女性スタッフが被害届を警察に提出したり、示談金を別に要求してくることが可能であるということです。
2 ご自身で示談するリスク
弁護士に依頼せずに示談交渉をすることはおすすめしません。
以下で説明するようなリスクがあります。
⑴被害者から面談を拒否される
加害者が謝罪したい、示談交渉をしたいと思っていても、被害者やその家族というのは加害者に対して恐怖心や怒りを持っていることが多く、会ったり連絡をして接触すること自体、拒否されて、示談交渉を行えない可能性があります。
加害者本人から謝罪の気持ちや示談金を提示したとしても、対応してくれるケースは多くないようです。
また、加害者が示談交渉をしたくても被害者の連絡先がわからないというケースもあります。
示談のためと警察に伝えても、警察が被害者の連絡先を教えてくれないことは多いです。
⑵高額な示談金を請求される
加害者は立場上、被害者に対して強い態度で交渉できないため、示談交渉では被害者の意向は大きく反映して、被害者の有利なように示談内容が定まってしまうというリスクもあります。
示談金の金額は、事件の状況や被害の程度によって異なり、一定の相場のようなものはありません。
事例や法律に詳しくない被害者と加害者だけでの示談金の決定は困難になるかと思われます。
⑶示談後に告訴状や被害届が出される
被害届や告訴状を提出する前に示談が成立した場合でも、被害者がその後に被害届や告訴状を提出する可能性があります。
示談交渉段階で被害者との間で、適切な交渉ができておらず、示談書にも「宥恕条項」などを含めていないことがあるためです。
宥恕(ゆうじょ)とは、犯罪等の行為を許すことを意味し、実際の示談書には、たとえば「甲は、乙を宥恕し(許し)、乙の刑事処罰を求めない。」というように記載されます。
警察沙汰になる前に、被害者から宥恕を得ることができれば、被害届を出されたり告訴をされることがなく、事件化されないまま解決することができる可能性があります。
また、警察沙汰になった後でも宥恕が得られれば、事件が送検されても検察官において不起訴処分になる可能性があります。
示談が成立したものの起訴された、あるいは起訴後に示談が成立した場合であっても、宥恕文言があれば判決において刑が減軽されることがあり、場合によっては執行猶予判決を得られることもあります。
宥恕条項を入れると加害者にとって非常に有利になります。
示談は基本的には、私法上の紛争を当事者の合意で解決するもので、簡単に言えば、解決金を合意にして手打ちにするというものです。
民事だけを考えれば、それで良いのですが、刑事事件化してしまうことを考える必要があります。
国家が犯罪行為に対して、刑罰を適用するかどうかという刑事事件の問題は、当事者同士が紛争解決に同意するかどうかという民事事件の問題とは、基本的には別物扱いだからです。
刑事事件への影響を考えた示談では、被害者の許し(宥恕)が重要になってきます。
そのため、示談ができたときに被害者が同意してくれるのであれば、上記の宥恕条項を示談書に入れます。
これにより、被害者が加害者を許したことを書面に残すことができ、加害者にとって有利に働く証拠になります。
もちろん被害者が本心で加害者を許してくれたことが大切です。
たとえば、被害者に示談内容をよく理解させずにサインさせたり、無理に示談させたりするのはやめるべきです。
被害届の取下げを示談書に書いた場合も被害者の処罰感情が緩和されたと判断されるため、起訴・不起訴に判断に大きな影響を与えます。
⑷トラブルが蒸し返される
適切な内容で示談書を作成することができていないと、トラブルを蒸し返される可能性があります。
示談書には、口外禁止条項や精算条項などを盛り込むべきです。
風俗トラブルの被害者と示談を成立させる際に、示談書にしばしば口外禁止条項と呼ばれる条項を入れることがあります。
例えば、「第○条 甲及び乙は、本件紛争、和解に至る経緯及び本件和解内容について、第三者に対し、口外しないことを相互に確認する。」というものです。
このような条項は、風俗トラブルや示談の内容が第三者に知られることで、誤解や風評が生じたり、名誉や信用が毀損されたり、第三者との間でもトラブルが生じたりすること等を防ぐことを目的としてます。
そして、相手が口外禁止条項に違反して、口外した場合にどうなるのかというのも非常に重要です。
そのような不安がある場合には、口外禁止条項に違反した場合には、相手方に対して、違約金として〇〇円を支払うという旨の条項を追加で記載するべきです。
違反を犯した場合の対応を書類で残しておくことで、お互いにリスクをできる限り低くして示談を成立することができます。
精算条項とは、示談において、示談成立後に追加的な金銭の請求、その他主として民事的紛争の蒸し返しを防止するための条項であり、示談書には、
「甲と乙は、この示談書に定めるもののほかに、甲と乙との間に何らの債権債務がないことを相互に確認する」
といった文言で記載されます。
しかし、清算条項があっても、示談締結の際に当事者が予測し得なかった後遺障害、その他の事情が生じるなどした場合には、その損害の賠償を請求される可能性はありますが、それでも、示談の時点で可能な限りトラブルの蒸し返しを防ぐため、精算条項は示談に必須です。
そして、これらの決めた内容については解釈に差異が生まれないように示談書に盛り込みます。
3 弁護士に依頼するメリット
風俗トラブルを起こしてしまったら、決して自分自身で解決しようと焦らずに、風俗トラブルに強い弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼するメリットを説明していきます。
⑴お店側とのやりとりを任せられる
風俗トラブルを起こしてしまうと、何度も連絡がきたり、自宅に押しかけてこられたりすることがあります。
そうなると私生活への悪影響も及ぼしますし、見た目の怖い男性から恐喝のような発言をされるとかなり恐怖心を感じて、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。
このようなやりとりも弁護士へ依頼すれば、直接自分自身でする必要がなくなり、お店側とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。
恐怖心や後ろめたさからお店側からの連絡を無視し続けていても、精神的にストレスを与えますし、時間が経つにつれ、穏便に解決することが難しくなります。
⑵適正な示談を結べる
トラブルが起きた際に、裁判によらずに、当事者が話し合って解決する方法があります。一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。
自分自身で示談を交渉すれば、トラブルなく解決できるのではないかとお考えの人もいると思いますが、示談内容・示談金額について効果的な示談を結ばなければ、再び金銭を請求されるなど不利な立場になることもあります。
しかし、風俗トラブルを弁護士に依頼することによって、弁護士が当事者に代わって、女性スタッフやお店と示談交渉をしてくれます。
そして、弁護士が示談交渉することによってトラブルの事案や状況によって妥当な示談金額を交渉して、適切な内容で法的に効力のある示談書を作成することができます。
もし、既にお店側が用意した示談書などの書類にサインしてしまっている場合には、事実確認を行い、改めて示談金の減額や今後のトラブルを防止するために交渉します。
お店との話し合いを重ねて相手の同意のもと示談書を締結するため、再要求される事も防止します。
⑶不当な請求を拒否できる
弁護士に依頼すると、風俗トラブルでお店側が金銭などを要求してきた際に、その請求が妥当なものか判断して、場合によっては請求を拒否することができます。
風俗トラブルの当事者はお店ではなく被害者である女性スタッフであり、お店の請求自体が法的には根拠のないケースが多いです。
また、当事者である女性スタッフからの請求があっても、法外な適切ではない慰謝料などを請求された場合には妥当な金額になるように減額を交渉します。
⑷刑事事件になるのを防げる
担当弁護士がご本人に代わってお店側や従業員などと示談交渉を行ったり、煩雑になりがちな警察に働きかけを行ったりすることによって、警察沙汰への発展を防止できる可能性が高まります。
示談交渉を弁護士に依頼すれば、警察に被害届や告訴状を出さないことを条件に加えた示談書を作成します。
そのため、刑事事件になることを防げる可能性が高くなります。
もしお店や従業員が被害届や告訴状を提出して刑事事件になった場合でも、示談が成立していれば、逮捕や起訴または懲役を免れる可能性が高くなります。
万一に、逮捕されてしまった後でも弁護士に早急に示談交渉を成立してもらうことで、送検もしくは起訴される前に早期釈放される可能性が高くなります。
警察や検察というのは、事件の加害者の処分を決める際に、被害者が加害者に対して、どれだけ強く処分してほしいと思っているのかという被害者の処罰感情を考慮しています。
そのために、すでに示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、被害者が加害者に対してそれほど強い処罰を望んでいるわけではないと考慮して、釈放が早くなったり、不起訴処分になったりと刑事裁判を回避できる可能性が非常に高くなります。
また、刑事裁判においても、被害者の感情というのは大きく考慮されます。したがって、示談が成立していると分かれば、実刑で刑務所に行かねばならないところが執行猶予になり刑務所に行かずに済んだり、実刑となっても刑期が短くなって刑務所に入る年数が少なくなるケースが多いです。
⑸家族や勤務先にバレない
家族や勤務先に風俗トラブルについて、知られてしまうと信用を落としかねません。
それまでのお互いの関係性が崩壊してしまう可能性もあると思います。
しかし、早い段階で弁護士に依頼すれば、代理人としてお店や女性スタッフに対して、本人やその家族、会社に連絡しないように求めます。
それに違反した場合の違約金や処罰を示談書に盛り込むことによって、外部に漏らすことを防ぎます。
自分自身で警告するよりも弁護士の方が抑止力が高いですし、お店によっては弁護士との交渉ごとに慣れている場合もありますので、訴えられるような行動は取らない可能性が高くなります。
そのため、弁護士に依頼することでお店との交渉を代わりにしてくれ家族や勤務先にバレずに解決できる可能性が高くなります。
⑹個人情報の流出が防げる
風俗トラブルで示談交渉する際に、弁護士が代理人として締結する示談書には、お店側が得た個人情報の破棄を要求した上で、悪用や流出を禁止する内容を盛り込みます。
お店を利用した段階で、名前や電話番号などの個人情報がお店側に渡っている事もあると思いますし、免許証や会社の名刺などもお店に要求され、情報が渡っているケースがあります。
これらの返却やコピーを破棄させるようにするため、個人情報の流出を防止できます。
この契約に違反して、お店側が個人情報を流出すれば、名誉毀損などで弁護士が訴えることができます。
この旨をお店側が理解するまで弁護士が説明し、今後のトラブルがないように徹底します。
4 まとめ
以上で、風俗トラブルの示談を弁護士に依頼しないリスク、そして依頼するメリットについて解説してきました。
弁護士に依頼することで早期にそして穏便に解決することを期待できます。
もし風俗トラブルに巻き込まれた場合は、一度風俗トラブルに強い弁護士にご相談ください。
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