児童福祉法違反とは

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

援助交際などで、児童に金銭を与えて性的行為を行なったり、行わせた場合に児童買春罪や児童福祉法違反に問われる可能性があります。また、児童に金銭などを提供しない場合でも条例違反となる場合があります。

今回の記事では、児童福祉法違反について内容や処罰について解説していきます。

1 児童福祉法違反とは

児童福祉法は、児童の健全な育成のために制定された法律です。

児童福祉法第1条

1 すべての国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。

2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

児童福祉法違反として、同法第34条1項の違反が最も典型的であり、重い処罰対象とされています。

児童福祉法第34条1項6号

何人も、次にあげる行為をしてはならない。

6 児童に淫行させる行為

同法第60条1項に「第34条第1項第6号の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」との規定があります。

児童福祉法第34条1項1号〜5号、7号〜9号

何人も次にあげる行為をしてはならない。

1 身体に障害または形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為

2 児童にこじきをさせ、または児童を利用してこじきをする行為

3 公衆の娯楽を目的として、満15歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為

4 満15歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為

4の2 児童に午後10時から午前3時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為

4の3 戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満15歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第4項の接待飲食等営業、同条第6項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第9項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為

5 満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為

7 前各号に掲げる行為をする恐れのあるものその他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなす恐れのある者に、情を知って、j児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされる恐れがあるの情を知って、他人に児童を引き渡す行為

8 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあっせんする行為

9 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的を持って、これを自己の支配下に置く行為

児童福祉法第60条2項で、「第34条第1項第1号から第5号まで又は第7号から第9号までの規定に違反した者は、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と規定されています。

 

2 青少年保護育成条例違反

青少年保護育成条例とは、青少年を保護するために、各都道府県が制定している条例のことをいいます。条例は法律と異なり、国ではなく各地方自治体が制定することが可能ですので、各自治体によって、内容が若干異なりますが大きな目的は同じ傾向にあります。

各都道府県で、青少年との淫行を禁止する青少年保護育成条例や青少年育成条例などの淫行条例が制定されています。

淫行条例とは、青少年保護育成条例のうちの淫行、淫らな性行為、わいせつな行為などを規制しています。

各都道府県により、淫行条例の規制や罰則は若干異なりますが、大阪府では大阪府青少年健全育成条例により、青少年と淫らな性行為及び猥褻な行為を規制しています。

大阪府青少年健全育成条例

何人も青少年に対して、次の行為を行ってはいけません。【条例第39条】

  • 青少年に金品などを渡して、又は渡すことを約束して性行為やわいせつな行為を行うこと。
  • 青少年を威迫し欺き、困惑させるなど青少年の未成熟に乗じた不当な手段を用い、又は青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為又はわいせつな行為を行うこと。
  • 青少年に売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又はそのような行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で、性行為やわいせつな行為を行うこと。

 

これに違反した場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。

 

3 児童売春と青少年保護育成条例違反の違い

淫行条例違反の場合は、児童買春罪と異なり、金銭のやり取りは関係ないため、18歳未満の者と性行為などをすることによって、成立します。

児童買春は、対価の支払いが要件となっていますが、青少年育成条例はそれが要件とはなっていません。

金銭などの対価を払って性行為をした場合は、真剣な交際であるという主張が認められることはありませんが、真摯な交際であるということが認められれば、違反とはいえないことになります。

真摯な交際であるにもかかわらず、児童買春の罪で逮捕されてしまった場合は、まずは対価を支払っていないことを主張し、児童買春の事案ではなく青少年保護育成条例の事案であることを論証します。

真摯な交際であることは示す証拠というのは、対価を支払っていないということを証明することになります。

 

4 弁護活動

⑴示談交渉

児童福祉法違反は、児童の保護者からの通報や児童の補導をきっかけとして、発覚するケースがあります。

このように発覚した場合、逮捕される可能性がありますが、逮捕されると最大で23日間身体を拘束されるため、逮捕されないように、逮捕された後でも、早期釈放に向けて弁護活動をしてもらう必要があります。

被害者がいる事件になりますので、早期釈放に向けて、被害者の許しを得て、示談を成立させることが重要になります。

示談が成立すれば、不起訴になったり執行猶予付きの判決を受けたり、逮捕や交流されていても早く釈放される可能性が高くなります。

ただし、児童買春、児童福祉法違反、淫行条例違反事件の場合、被害者は未成年ですので基本的に示談交渉の相手となるのは、被害者の保護者ということになります。一般的に被害者自身と示談交渉するのに比べて、その保護者と示談交渉する場合の方が交渉は難航します。

そのため、ご自身で示談交渉を行おうとすることは非常に難しく、法律の専門家である弁護士に任せることがいいと考えます。

 

⑵無罪主張

児童買春、児童福祉法違反、淫行条例違反事件では、18歳未満であることを知らずに淫行させた場合や、真剣な交際による性行為は成立しません。

18歳未満の児童と性行為をしたという事実はないにもかかわらず、捜査機関からありもしない疑いをかけられ捜査対象になってしまう場合があります。

弁護士に依頼すれば、児童買春罪、児童福祉法違反罪、淫行条例違反罪の不成立を主張し、不起訴処分の獲得や無罪判決の獲得に尽力します。

 

5 弁護士に依頼するメリット

⑴逮捕されることを防ぐことができる

逮捕前に示談が成立すれば、被害者が警察へ通報したり、被害届を提出することを禁止する約束をすることができます。

もしすでに、被害届が提出されている場合には、被害届を取り下げてもらう条項を示談書に記載して、取り下げてもらいます。

刑事事件になったとしても、すでに示談が成立しているということで、警察が加害者の逮捕のために動く可能性が低くなります。

⑵不起訴・釈放の可能性が高くなる

警察や検察は、犯人の処分を決める際に、被害者がどれだけ加害者を強く処罰してほしいと思っているかという被害者の処罰感情を考慮しています。

そのため、示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、争いがなく、被害者が加害者に対して強い処罰を望んでいるわけではないと考慮され、早期の釈放をされたり、不起訴ということで、刑事裁判にならない可能性が高くなります。

⑶刑事処分が軽くなる可能性が高くなる

刑事裁判においても、被害者の感情が考慮されるため、示談が成立していれば、裁判を受けることになっても、罰金刑になる可能性や執行猶予がつき実刑を免れる可能性も高くなります。

また、実刑判決となっても刑期が短くなる可能性が高まります。

⑷民事訴訟を起こされる可能性が低くなる

示談をしていない場合、刑事裁判での刑罰とは別に、損害賠償を求める民事裁判を起こされて被害者へ金銭を支払うように判決が出る可能性があります。

示談をしておけば、示談書で定めた以外の債権債務が存在しないことを確認する清算条項を記載することによって、示談で定めた内容以外の金銭は支払わなくてもよいので、民事裁判を起こされる可能性がほぼなくなります。

 

6 まとめ

以上で、淫行条例・児童福祉法違反について内容や処罰、そして弁護活動について解説しました。

逮捕されたり、刑罰を避けるもしくは少しでも最小限に留めるためには、示談交渉をすることによって被害者の許しを得ることが重要です。

そして、時間が経過するごとにそれが困難になっていきますので、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、弁護活動を始めてもらう必要があります。

このようなことでお困りでしたら、刑事事件の実績が豊富な弁護士にご相談ください。

今回の記事がお悩みの方の少しでも参考になれば幸いです。

 

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