同意があっても禁物

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

1.同意があることの法律上の意味

 風俗店とのトラブルで最もご相談件数が多いのは、俗にいう本番トラブルです。

 これは、一般的には、風俗店やデリヘルなどにおいて、サービス利用中に、女性キャストとの間でお店が禁止している性行為を行ったことに起因する、風俗店・キャストその他関係者との間で生じるトラブルと理解されています。

 こうした風俗トラブルの中には、女性キャストが嫌がっているにもかかわらず、無理やり本番行為を行ったケースもありますが、中には「明確に同意していた」「確かに明確な同意はなかったが、ただ明確に拒否もされていないので、黙示の同意があった」など、女性キャストの同意のもと本番行為を行ったというケースもあります。

 もし、本番行為を行うことについて女性キャストの同意があったのであれば、理論的には、強制性交等罪(刑法第177条。昔でいう「強姦罪」です。:十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。)は成立しませんし、治療費、休業補償、慰謝料といった民事上の損害賠償責任も負うことはありません。

2.実際のよくある問題

 ところが、実際には、サービス終了後に突然、女性キャストや風俗店から、「無理やり本番行為をされた」などと言われ、慰謝料や罰金といった名目でお金を請求されるケースが非常に多いです。
弊所に本番トラブルの対応をご相談・ご依頼される方の中にも、「女性キャストも同意していたのに、お金を請求してくるなんでおかしい!」とか、中には「向こうから本番行為をしようと言ってきたのに、後からお金を請求してくるなんて詐欺じゃないか!」などとおっしゃる方が多いです。

 しかし、そうした行為は密室の中で行われるため、録音テープや防犯カメラといった当事者間のやりとりに関する客観証拠が乏しいので、同意があった!なかった!の水掛け論になることがほとんどです。また、仮に女性が明確に拒絶していなかったとしても、「抵抗したら何をされるかわからないため怖くて抵抗できなかった」というケースもありますし、たとえそう思っていなくても、後からそのように言い出す可能性も十分考えられます。

 拒絶しない=同意がある、とお考えになるのは危険であるということです。

 そのため、法律上犯罪が成立するかどうかや民事上責任を負うかどうかはともかく、女性キャストや風俗店から、「無理やり本番行為をされた」と言われ、警察に通報されたり、自宅や職場に連絡するなどと脅されたりするケースが後を絶ちません。

3.トラブルを防ぐためには

 もしこのような事態に陥ってしまった場合には、早急に弁護士にご相談することをおすすめします。ご自身でご対応されると、自宅や職場に押しかけられて家族や同僚・上司にトラブルの内容を知られてしまったり、高額なお金を支払う約束を書面で取り決めしてしまったりするなど、取り返しのつかない事態になりかねません。最悪の場合、強制性交等罪として逮捕・起訴されてしまうおそれもあります。弁護士が早期にきちんと対応すれば、ほとんどのケースでそういった事態を防ぐことができます。

 もっとも、弁護士に本番トラブルの対応をご依頼すると、それなりに費用がかかってしまいます。そのため、最も大事なことは、こうしたトラブルが起こらないようにするために、たとえ女性キャストの明確な同意があったとしても、本番行為は行わないようにすることでしょう。

関連キーワード