デリヘル問題の逮捕について
- コラム
デリヘル等の風俗を利用して、性的サービスを受けた際にトラブルが起きてしまうことはよくあります。
盗撮や本番行為により、罰金や示談金の支払いを要求されるなど、警察沙汰になったりとトラブルに発展してしまった場合に、お困りになっている方が非常に多いですが、逮捕されている事例や高額な金銭を支払うことになった事例も存在します。
そこで今回はデリヘルなどの風俗での逮捕事例について解説していきます。
1 デリヘルでトラブルが起きやすい理由
デリヘル(デリバリーヘルス)とは店舗型ではない無店舗型ヘルスの総称です。派遣型ヘルスとも呼ばれ、デリヘルは電話1本でホテルや自宅に女の子を派遣してもらえる種類の風俗です。
風俗でのトラブルは特にデリヘルでのトラブルが多く発生しており、弁護士にご相談される方も多くいらっしゃいます。
箱型と呼ばれるソープランドなどの風俗店は、風俗店スタッフがすぐ近くにいる店舗内にて性的サービスが行われます。
お店の中でのサービスであれば、その場にスタッフがいなくてもある程度監視できるため、また何かあればすぐに駆けつけることができるため、当然お客さんとしてはルールを守ります。
しかし、デリヘルは自宅やラブホテルなどのお店から離れた店外でのサービスとなります。
お店から離れているために、お店のスタッフの監視の目が気にならなくなり、気が緩んで羽目を外した行動をしてしまうお客さんが多いのです。これは、お客さんだけではなく、風俗嬢もスタッフの目が届かないということで、禁止行為に及んでしまし、トラブルに発展ということがあります。
当然、デリヘルでもルールは存在しますが、自宅やホテルの密室で2人きりという状況がトラブルを起こしてしまうということです。
2 起きやすいトラブル事例
⑴盗撮
デリヘルで特に多く発生しているトラブルが盗撮です。
店舗型風俗の場合は、風俗嬢が待機している部屋に後からお客さんが入るというパターンになっていることが多いため、盗撮するためにカメラ・スマホを設置する時間がありません。
しかし、デリヘルの場合は、お客さんが待機している場所に女性を呼ぶため、カメラの設置が可能で、バレないだろうという気持ちになってしまい、盗撮行為に及んでしてしまう人がいるのです。
さらに、撮影したデータをもとに女性スタッフを脅して、本番行為を強要するというケースも起きているようです。
性的サービスを相手の許可なく盗撮することは、迷惑防止条例違反等の犯罪行為が成立する可能性があります。
⑵本番行為
上記のように、お店のスタッフがすぐ駆けつけれる状況でサービスを行う店舗型風俗に対して、スタッフがそばにいないホテルや自宅でサービスを行うデリヘルは、ハメを外して本番行為に及んでしまうことが多くなっているようです。
また、女性スタッフも風俗店のスタッフの監視の目から離れるということで、次回指名してもらうためであったり、別途料金をもらうためであったりして、お客さんからの本番行為の誘いに応じてしまうことも少なくありません。
店舗型風俗店では、店舗内で本番行為が行われていたとなると、売春行為として、厳しい処罰を受けることになる可能性が高いため、風俗店自体が厳しく本番行為を禁止しています。
しかし、お店とは別の場所で性的サービスが行われるデリヘルでは、本番行為について知らなかったと言い訳することができるので、厳しく監視していないこともあるようです。
このように本番行為がしやすいという状況がお客さんの羽目を外しやすくしており、このような経験をもとに、デリヘルは本番行為を許してくれるという間違えた認識をして、本番トラブルになってしまうことがあるのです。
⑶暴行
SM行為を強要して、暴行を加えてしまったり、女性スタッフに無理なお願いを拒否されたことで、暴行を加えてしまうお客さんもいるようです。
また、上記で本番行為に及んでしまうケースが多いと説明しましたが、これに伴い妊娠についてのトラブルが起こる可能性も高くなります。
例え、本番行為について女性スタッフの同意があったとしても、妊娠をすることに対しては、もちろん許容していないと考えられます。
その場合、妊娠させてしまうと中絶費用や検査費用、慰謝料の請求をされてしまいます。
出産してしまった場合には、養育費の支払い義務も発生しますので、本番行為はするべきではありません。
⑷店外サービス
お客さんの中には、気に入った風俗嬢がいると、お店を介せずに直接連絡を取ったり、遊ぶことを提案する人もいます。
お客さんにとっても料金が安く済み、風俗嬢にとってもお店の取り分も含めて全額得ることができるので、双方にとってメリットがあります。
しかし、お店は売上が減少する行為を許しておくわけがないため、禁止しているので、店外デートが知られれば、高額な罰金を請求される可能性があります。
⑸ストーカー
デリヘルは、お店のスタッフの目がない場所で女性と2人きりでサービスの時間を過ごします。女性はあくまで、お金をいただいた対価として、仕事としてサービスを行なっているわけですが、本当にまるで恋人であるかのように錯覚してしまうお客さんもいます。
デリヘルの女性スタッフをリピーターとして指名を繰り返すことは喜ばれますが、勘違いをして営業外で行動しようとしてしまいます。
そして、1人の女性として好きになってしまい、その気持ちが受け入れてもらえないとなると、結果、しつこく連絡をしたりストーカーと化して、暴走してしまうこともあります。
お店を介さずに、女性スタッフと接触することは、それだけでルール違反であり、罰金を請求されてしまうこともあります。
それだけではなく、女性スタッフが被害届を出せば、ストーカー被害として犯罪が成立してしまう可能性があります。
3 トラブルになったらどうなるのか
デリヘルなどの風俗店を利用した際に、つい上で解説したようなことをしてしまい、トラブルになった際に、警察に逮捕されてしまうのか、高額な金銭を支払わなければならいのか、家族や勤務先にバレるのかと心配事が多いと思います。
⑴慰謝料や損害賠償金を要求される
風俗店では、お客さんの本番行為や盗撮、盗聴を禁止する張り紙や利用規約を掲載しているところがあります。
お店にそれらの行為がバレた場合には、罰金として金銭の支払いを要求される可能性があります。
また、本番行為や盗撮されたことによって女性スタッフが精神的ダメージを負い、休まないといけない状態になれば、売上が落ちたと損害賠償や慰謝料を求められる可能性があります。
⑵家族や会社に連絡される
上記で風俗店で本番行為や盗撮をしたことによって、慰謝料や損害賠償を請求される可能性があると説明しましたが、その際に支払わなければ家族や勤務先にバラすと脅されたり、払わないことで家族や会社にもお店からお金を支払うように連絡をされることがあります。
⑶被害届を出される
お店に自分の個人情報を知られてしまうと警察に被害届を提出され、警察沙汰にされる可能性もあります。
そうなれば、慰謝料や損害賠償の請求だけではなく、犯罪として刑事罰を受けることになるかもしれません。
4 風俗トラブルで逮捕されるのか
上記で説明したようなトラブルを起こしてしまった場合に、犯罪が成立して逮捕されるのかどうかについて解説します。
⑴盗撮
デリヘルでの盗撮が刑事事件になる際には、迷惑防止条例違反が考えられます。
迷惑防止条例とは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の略称で、社会一般の人々に著しく迷惑をかける暴力的な行為等を防止して、住民の生活の平穏を守るための法律です。
47都道府県や一部の市町村で制定されており、この迷惑防止条例の中に盗撮に関する規定があります。各都道府県によって条例に書かれている文言は多少異なります。
つまり、風俗での盗撮が迷惑防止条例違反以外等するかどうかは、それぞれの都道府県の迷惑防止条例の内容によって変わってきます。
東京都の迷惑防止条例違反では第5条に「粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止」が定められています。これによって、デリヘルでの盗撮行為は取り締まりの対象とされます。
また大阪府でも迷惑防止条例が改正され、デリヘルの盗撮が条例で規制されることになりました。
東京都迷惑防止条例は「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」と「公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」で下着又は裸体の盗撮を禁止しています。
自宅は、住居に該当し、ラブホテルや風俗店のプレイルーム等は「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」にあたるので、処罰対象になります。
そのため、風俗を利用中に女性スタッフを盗撮する行為は条例違反となります。
また、実際に撮影を行なっていなかったとしても、撮影するためにホテルや自宅内に隠しカメラを設置したり、撮影機器を女性スタッフに向けるだけでも東京都や大阪府などの迷惑防止条例違反に抵触します。
東京都の迷惑防止条例では,以下のように規定されています。
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
なお常習の場合には
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
すなわち、風俗店での盗撮行為も警察に逮捕されてしまう可能性があります。
ただし、現時点で一部の県では改正がまだされておらず、自宅やホテル、風俗店のプレイルームでの盗撮が規制対象となっていません。
盗撮トラブルを起こしてしまった場合には、その地域の迷惑防止条例を確認する必要があります。
⑵暴行
暴行罪(刑法208条)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
女性スタッフに対して、蹴ったり殴ったりして、怪我を負わせなかった場合には暴行罪、怪我を負わせた場合には傷害罪が成立します。
この暴力や脅迫をもって性行為に及んだ場合には、強制性交等罪が成立する可能性があります。強制性交等罪が成立すれば、5年以上の有期懲役に処される可能性があります。
⑶ストーカー
ストーカー行為はストーカー規制法で禁止されております。
ストーカー規制法では、「ストーカー行為を処罰するなどストーカー行為について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的としています。」とされています。
同一の者に対し「つきまとい等」を繰り返して行うことを「ストーカー行為」と規定しており、ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第18条)、禁止命令等に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(第19条)と重い罪となっています。
⑷本番行為
売春防止法第2条、第3条では、お金や物をもらったり、貰う約束をして、不特定の人と性交を禁止しています。
したがって、女性スタッフと本番行為をすれば売春防止法違反となり、犯罪行為ということになります。
しかし、売春防止法には罰則規定がないため、違法な犯罪ではあるが、警察に逮捕されることはないということになります。
ただ、本番行為について女性スタッフの同意がなかった場合は、強制性交等罪で犯罪として警察に逮捕される可能性も高くなります。
(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法第177条は強姦罪という名称でしたが、平成29年の改正で強制性交等罪に変更になりました。
強制性交等罪が成立するかどうかは、暴行や脅迫の程度によります。
この暴行や脅迫の程度は、最高裁判例で「相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるもの」とされています。
つまり、女性スタッフが抵抗できないくらい、もしくは抵抗するのが非常に難しい程度の暴力や脅迫によって、本番行為を行うと、強制性交等罪が成立するということです。
このような脅迫や暴行の上で、挿入まで至らなかった場合には、未遂罪が成立します。そして、その暴行で女性スタッフが怪我をしたら、刑法第181条2項の強姦致傷罪が成立します。
例えば、「サービスの最中に意図せず滑って挿入してしまった」「本番行為をしたいと依頼したところ無視or断られたが、我慢できずに暴行などは一切せずに挿入してしまった」というパターンもよくありますが、強制性交等罪が成立する条件である脅迫や暴行を満たしていないということになりますので、逮捕されることはありません。
5 まとめ
これまで、デリヘル等のトラブルでどうのようなリスクが考えられるか、どのような犯罪に該当する可能性があるのかについて解説してきました。
トラブルを起こしてしまった方は、これからどうなっていくのか逮捕されるのかとても不安なことだと思います。
風俗トラブルを解決するためには、迅速に示談をすることが重要ですが、そのためにはできるだけ早く弁護士に相談する必要があります。
少しでも風俗トラブルでお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に風俗トラブルに強い弊所へご相談ください。
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