【早期解決の知識】罰金は支払わなければならないのか?
- コラム
思わずしてしまった事が発端で、揉め事に巻き込まれてしまった場合に罰金を請求されるケースがあります。法外な罰金を請求されたり、脅されていた場合はどの様にして解決するべきなのでしょうか。今回は、罰金を請求された場合について解説します。
1. トラブルになる主なNG行為
デリヘルなどの風俗サービスにおいて、よく相談にのぼるトラブルの原因となる行為があります。主なNG行為を確認しましょう。
1-1 本番行為をしてしまった
よく耳にするのが「本番」という言葉ですが、これは性行為を意味する隠語です。デリヘルなどで本番を行うことは、店の利用規約で禁止されているところがほとんどです。なぜなら、金銭などのやり取りを伴う性行為=「売春」となり、売春禁止法に違反してしまうからです。店側も法律違反をしたくはないので、女性キャストにも本番を禁じているところがほとんどです。
法律第百十八号 売春防止法
第二条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
(売春の禁止)
第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
(勧誘等)
第五条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
(周旋等)
第六条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
もし、女性キャストから「お金を出すなら本番できる」などと誘ってきたとしても、断る事が大切です。もし、利用側から持ちかけた場合は、後から「本番を強要された」「怖くて拒否できなかった」と主張され、厄介なトラブルになる場合があります。この場合、強制性交等罪が成立する可能性も出てくるので細心の注意が必要でしょう。
刑法第百七十七条 強制性交等罪
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛 ( こう ) 門性交又は口腔 ( くう ) 性交 ( 以下「性交等」という。) をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役
1-2 女性キャストが18歳未満の未成年だった
通常の店では18歳未満の未成年を雇っていることはありません。もし、未成年を風俗業務に従事させると法律に違反するからです。
風営法(禁止行為等)
第 22 条 三 営業所で、18 歳未満の者に客の接待をさせること。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
法律第五十二号(平一一・五・二六)二 児童に対する性交等の周旋をした者
しかし悪質な店では、店側が未成年と認識しながら客にサービスさせたりしている場合もあるので油断できません。女性キャストが18歳未満であると知った上でサービスを利用してしまうと、各都道府県の青少年保護育成条例違反や、児童買春・児童ポルノ禁止法違反となる可能性があります。お店が摘発された場合や女性キャストが警察に補導されるなどして、利用履歴がわかれば逮捕に至る可能性があります。
1-3 盗撮をした
スマホなどの小型カメラの性能が良くなったため、近年増加傾向なのが盗撮です。盗撮増加を防ぐため各自治体の迷惑防止条例改正などが行われています。お店側も盗撮に対して警戒をしているため、不自然な利用者の挙動について女性キャストへ教育しているところが多く、盗撮がバレるケースが多発しています。その際に女性キャストと店側から慰謝料や示談金と称して高額な金額を請求されるトラブルになることがあります。
大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
( 卑わいな行為の禁止 )
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。二 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
二 前号に掲げるもののほか、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること( 前項又は第四項の規定に違反する行為を除く。)。
3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。
二 みだりに、姿態を撮影すること。
4 何人も、第一項各号又は前項第二号の規定による撮影の目的で、写真機等を人に向け、又は設置してはならない。
軽犯罪法
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
1-4 女性キャストに怪我をさせた
サービスを受けている最中に女性キャストに誤って怪我をさせてしまった場合、女性キャストが店に報告をします。その際に、金銭トラブルになることがあります。
(過失傷害)第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
過失とは、わざとではなく誤って起こってしまった場合のことです。サービス中に女性キャストへ配慮が欠けてしまい、意図せずに怪我をさせてしまったときに成立します。わざとでなくても、女性キャストの怪我の状態や場所によっては、勤務ができなくなるためその間の慰謝料を請求される事があります。
2. 店側が主張する罰金
サービス前に利用規約などで罰金について説明している店もあります。この罰金請求の支払い義務はあるのでしょうか? 結論として、客に対して罰を科すことは一民間企業の風俗店にはできないはずなので、罰金を請求されたとしても法的な支払義務はありません。しかし注意する点は、これを逆手にとって支払いを無視すれば、女性キャストや風俗店は面白く無いはずです。盗撮が犯罪行為である以上、警察沙汰に発展してさせてしまうのは避けるべきです。女性キャスト・風俗店とトラブルになった場合は、法的に有効な示談を成立させてトラブルを解決しなくてはなりません。
3. トラブル時の対処法
揉め事に発展した場合、対応は店の男性従業員が当たることがほとんどで、高圧的な態度をとってくることが予想できます。対処法を見ていきましょう。
3-1 その場でサインしない
店側から慰謝料などを要求されるときに、誓約書・念書・示談書などと称した書類を提示されサインするように求められるケースがあります。しかしこのような店側が用意した書類には、店側に有利になるような条件が盛り込まれていたり、意図的に不備があったりする事が多く、同意してしまうのは非常にリスクが高いです。事態を収めたい焦りから、同意してしまう方もいらっしゃいますが、サインをせず、落ち着いて「弁護士に相談する」と言いその場を離れて至急弁護士に連絡をしてください。また、暴行などの危機が迫っている緊急の場合は警察に通報しましょう。
3-2 その場で支払わない
要求してきた罰金と称した請求に対し、すぐにお金を支払わないでください。ここで要求された金額は法外に高額な事がほとんどです。ですので、妥当な請求かどうか判断が必要です。
3-3 やり取りの記録を残す
もし店側から脅迫・恐喝された場合は、やり取りの記録を残しましょう。可能であれば録音をし、難しい状況であれば相手の言動を詳細にメモに残してください。また、暴行を受けてしまった場合は、怪我をした箇所の写真を撮り、病院で医師から診断書を出してもらいましょう。怪我に限らず、精神的な症状も含まれます。
3-4 すみやかに弁護士に相談する
トラブル解決は時間との勝負です。鮮度が高いうちに手を打ち、相手が警察に被害届を出す前に示談を成立させるべきです。そのためには、弁護士の知識と交渉経験が必須と言えるでしょう。
4. 弁護士に相談するメリット
弁護士を代理人に立てて、示談交渉すると次のようなメリットがあります。
4-1 女性キャストや店側との連絡を全て弁護士が対応してくれる
弁護士を代理人に立てたその時点から一切の連絡をあなたにしないよう求めることができます。ですので、精神的・肉体的負担を軽くすることができます。
4-2 執拗な連絡を受けなくて済む
「早く金を払え」などの電話や押しかけに怯えることがなくなります。弁護士が代理人として交渉することによって、店側の行為が脅迫・恐喝に該当する犯罪行為だと指摘できます。
4-3 不当な請求を拒否できる
罰金や違約金と称した請求が妥当なものか判断し、法的に支払義務がない場合は、請求を拒否することが可能です。
4-4 適正な示談を締結できる
トラブルの内容や状況を判断して、適正な内容で、法的に有効な示談書を作成できます。もし、先に店側から脅迫されて示談書にサインをしてしまっていた場合でも、脅迫によってなされた合意のない示談書の無効化を主張します。
4-5 トラブルの再燃を防止する
後々トラブルが再燃されることを防ぐため、示談書の内容に「この示談書に書かれているもの以外の債権債務はない」と清算条項を記載します。示談書に記載した内容以外の金銭請求をできなくさせます。そして、店側にあなたの個人情報を破棄させることを示談書の内容に盛り込むこともできます。
4-6 刑事事件になるのを防げる
女性キャストが、被害届や告訴状を警察に提出すると刑事事件になる可能性があります。しかし、その前に「警察に被害届や告訴状を出さないこと」を示談書に盛り込む事ができれば、刑事事件になることを防げる可能性が高くなります。万が一、女性キャストが示談締結後に被害届や告訴状を提出して刑事事件になってしまった場合でも、一度示談が成立していれば、逮捕や起訴を免れる可能性が出てきます。
4-7 家族や職場に知られないで済む
弁護士は、女性キャストや店側に、今後あなたやその家族・職場に連絡をしないように求めます。もし、これに反して「罰金を払わなければ家族にばらす」などと脅迫してきた場合、脅迫・恐喝などの犯罪行為として、刑事告訴する可能性があることを通知できます。ですので、弁護士が交渉することによって、家族や職場に知られずに解決できる可能性が高くなります。
5. 示談書の内容
示談交渉を終え、双方の合意が確認出来たら示談書の作成に入ります。ここで盛り込むべき内容として以下の項目を設定します。
【示談書に盛り込むべき項目】
・誰と、いつ、どこで、どのようなトラブルについての示談なのか【 行為・示談相手の特定 】
・示談金の金額・支払いの方法 ( 振込 / 現金書留など )( 一括 / 分割 )・支払期限
・示談金支払い後の取り決め(被害届を出さないことを約束するなど)
・示談書で定めた以外の債権責務がないことを確認し、今後一切請求を行わないという約束【 精算条項 】
・お互いに連絡や接触しないことを約束する【 接触禁止条項 】
・お互い第三者にトラブルの件を口外しないことを約束する【 守秘義務条項 】
・他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める【 違約金条項 】
上記の項目を盛り込むことで、後々のトラブルの発生を防ぐことが出来ます。また、相手に個人情報が渡っている場合も、悪用できないように破棄させ、一切の接触をしないと約束することが出来ますもし、警察に被害届を出さないという取り決めができれば、非常にメリットが大きいと言えます。
6.示談締結後のアフターケア
示談が成立したら、示談書を渡されますので、数年間は保管する様にしてください。また、今後の生活や風俗トラブルについてのアドバイスをしていきます。もし、女性キャストや店側が示談に盛り込んだ項目の約束を破った場合、すみやかに対応しバックアップしていきます。
7.まとめ
一度取り交わして成立してしまった示談を取り消すのは難しいことですが、脅迫などの事実があれば不適切な示談だったとして、再度示談交渉することが可能になるでしょう。そして、法的に有効で適切な内容の示談を締結させることで、やっと問題の解決と言えます。そのためには、豊富な法律の知識と交渉経験が必要です。デリヘルトラブルの解決事案の多い同所の弁護士が、あなたを全力でサポートいたします
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