本番行為で警察が介入する事例

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

1 無理やり本番行為を行った事例

刑法177条前段は、「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。」と規定し、強制性交等罪について定めています。これは、平成29年における法改正前の「強姦罪」に相当するものです。

 

強制性交等罪の典型例としては、被害者の体を押さえつけたり、その首を締め付けたり、刃物をちらつかせながら「動いたら殺す。」と言ったりするなどして、被害者の反抗を著しく困難な状態にしたうえで性交を行うケースです。

 

このことは、性サービスを提供することを目的とする風俗店・デリヘル店で行ったとしても同じです。

つまり、風俗店・デリヘル店を利用した際に、無理やり女性に性交を行うことは、理論上は強制性交等罪に該当します。

強制性交等罪という犯罪に該当する以上、それを行えば当然警察が介入するおそれがあります。

そもそも、風俗店・デリヘル店では本番行為は禁止されており、たとえ性サービスの提供の合意があっても、『性交』の合意まではないのが通常です。

 

もっとも、性サービスを提供することを目的としている風俗店・デリヘル店の特質上、通常のケースよりも立件(特に被害者の同意の有無に関する立証))が難しいということもあり、警察も介入することに慎重となるケースが多い印象を受けます。

 

しかし、弊所が過去に扱った案件の中には、抵抗する女性キャストの体を押さえつけて本番行為に及び、行為終了後、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されたケースもありました。

したがって、風俗店・デリヘル店で無理やり本番行為を行えば、警察が介入する可能性は当然あります。

 

2 合意の上で本番行為を行った事例

強制性交等罪は、あくまでも相手方の意思に反して性交をした場合に成立する犯罪です。言い換えると、相手方の同意、つまり性交を行う合意があったのであれば、性交を行ったとしても、当然、強制性交等罪は成立しません。

このことは、風俗店・デリヘル店で行ったとしても同じです。

 

つまり、風俗店・デリヘル店を利用した際に、女性キャストの同意を得たうえで性交を行うことは、理論上は強制性交等罪に該当しません。本来であれば、強制性交等罪に該当しないのであれば、当然警察が介入するおそれもありません。

 

しかし、実際には、女性キャストが同意していたにもかかわらず、後から同意がなかったとして金銭請求や被害届の提出をされるケースがよくあります。

その中には、明確に同意をしていたケースと、明確には同意をしていなかったケース(特に嫌がるそぶりを見せなかったので、同意をしているものと認識したケース)がありますが、後者のケースの場合、状況次第では、そもそも同意のない性交に該当するとの評価を受けるおそれがあります。

いずれのケースであったとしても、同意があったかどうかについては現場にいた本人らしか知らず、現場にいなかった警察にとっては知りようがありません。

ただ、たとえ実際には明確に同意があったとしても、その場の状況や女性キャストの証言内容などから同意がないのに性交を行ったとの嫌疑をかけられ、最悪の場合は現行犯逮捕されるケースもあります。

 

3 おわりに

以上のとおり、仮に女性キャストの明確な同意があったとしても、性交を行うことは警察介入のリスクがつきまといます。また、たとえ警察の介入がなくても、お店側から民事的に損害賠償請求がされる可能性も残り、場合によってはお店側から違法かつ執拗に金銭請求をされるリスクもあります。

したがって、風俗店・デリヘル店を利用した際には、性交を行わないこと(=ルールを守ること)がトラブル防止にとって非常に大事です。

 

風俗店・デリヘル店で本番行為をしてしまってご不安な方は、一度弁護士にご相談してみてください。

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