強制性交等罪で逮捕された時の対処法

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

風俗店において、女性スタッフの同意もなしに無理やり本番行為に及んでしまい、利用者と風俗店でトラブルになるケースがあります。

女性スタッフの合意もなく無理やり本番行為をしてしまった場合には、強制性交等罪にあたり、重い処罰が下される可能性があります。

今回の記事では、風俗での強制性交等罪で逮捕された時の対処法について解説していきます。

1 強制性交等罪

⑴強制性交等罪の構成要件

「暴行」とは、人の身体に対して有形力を行使すること、「脅迫」とは、人の生命、身体等に害を加えると伝えることです。

被害者の年齢・精神状態・健康状態、犯行の時刻や場所、容態等を考慮して、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度かどうかを判断されます。

性交等とは、性交、肛門性交、口腔成功のことを指します。男性のみならず、女性が主体となって他の男性にこれらの行為をさせた場合、男性が男性にこれらの行為をした場合を処罰の対象となります。

⑵強制性交等罪の罰則

強制性交等罪の罰則は5年以上の有期懲役とされており、非常に重い罪です。有期懲役の上限は20年です。

なお、執行猶予付き判決を受けるには3年以下の懲役を受けなければなりません。強制性交等罪の懲役の下限は5年ですから、基本的に執行猶予付き判決を受けられない、つまり実刑になります。

2 強制性交等罪に変更

以前は、強姦罪とされていましたが、2017年に施行された改正刑法によって、強制性交等罪に変更されました。

強姦罪が加害者は男性、被害者は女性としていた点、性交以外の類似の性犯罪に強姦罪が適用できずに不当な法定刑格差を生じさせてしまっていた点。また、強盗罪より強姦罪の法定刑が軽くなっていた点等への批判が高まったことから、2017616日、国会で改正がなされました。

⑴女性だけではなく男性も被害者の対象になった

強姦とは、暴力行為によって女性を犯すという意味がありますが、改正で被害者の適用範囲が拡大され、性別は関係ないことなりました。被害者が誰であれ、構成要件に該当する行為があれば、犯罪が成立することになります。

⑵被害の範囲が拡大された

改正前の強姦罪では、男性器が女性器に挿入されることを要件としていました。肛門性交や口腔性交では強姦罪の要件を満たしていないため、強姦罪が成立することはありませんでした。

しかし、暴行または脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔性交を行えば、強制性交等罪が成立することになりました。

⑶刑が重くなった

改正前の強姦罪は3年以上20年以下の有期懲役でしたが、強姦罪の悪質性に鑑みて、3年以上という法定刑は軽過ぎるのではないかと指摘されてきたため厳罰化されました。強制性交等罪は5年以上の有期懲役となりました。

執行猶予が付される可能性があるのは、懲役3年以下の場合のため、強制性交等罪で執行猶予を獲得することは、これまで以上に難しくなりました。

⑷被害者の告訴が不要になった

これまでの強姦罪では、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪となっていましたが、非親告罪となり、被害者の告訴なしに起訴できるようになりました。

被害者に告訴という行為を求めるのは、被害者の過度な精神的負担になっているのではないかということで、非親告罪になりました。

3 本番強要によりトラブルになった際に注意点

風俗にて、お客さんが女性スタッフにレイプをしてしまった場合、その際には裏の男性スタッフが怯えさせるような対応で、恐喝や脅迫をしてくるケースもあります。

そのケースで、本番行為や盗撮などこちらに問題がある場合には、警察に相談するのも抵抗があるかもしれません。

ここではそういったケースでの対処法について解説します。

⑴その場でお金を払わない

風俗トラブルでは、お店のスタッフから罰金や慰謝料とし高額な金銭を支払うように要求してくることがありますが、脅されてもその場で支払わないようにしましょう。

お店や女性スタッフが要求する罰金や慰謝料が法的に支払う義務があるのか、その金額は妥当なものかを判断する必要があります。

また、その場でお金を支払って、それで解決になればいいですが、その後も繰り返し請求をされるケースがあります。

さらに、法外な金額であったとしても一度支払ったお金を取り返すことは時間も手間もかかります。

「払わなければ殺すぞ」のような直接的な言葉を使用すると恐喝罪になってしまうということを危惧して、別の形でお客さんにプレッシャーをかけてくるかもしれませんが、その後に繰り返し請求されないためにも、最初の段階で払わないようにしましょう。

⑵落ち着いて対応する

自分が問題を起こした場合に、強面の男性スタッフにプレッシャーをかけられれば、冷静に判断し対応することは難しくなるでしょう。

しかし、風俗店や女性スタッフが事実とは異なる主張をしている場合もあります。

本番トラブルでは、女性スタッフの同意を得ていたはずだったのに、女性スタッフの主張が一変して、無理やり本番行為をされたと主張してくるケースもあります。

本番行為については、暴行をしたり、力づくで抑えた上で及んだというレベルでなければ犯罪にはなりません。

問題が発生した過程は明確にしておくべきですので、事実と異なる主張をされても認めてしまうと、後から覆すことが難しくなってしまいます。

お店や女性スタッフの主張が事実と異なる場合には、事実無根であるということを伝えるべきです。

威圧的な態度で、プレッシャーをかけられていると反論することが難しいと思いますが、適切な対応を取れば、穏便に解決できることもありますので、冷静に落ち着いて、対応しましょう。

⑶録音や記録を残しておく

風俗店・女性スタッフとの会話を録音などして証拠を残しておきましょう。

後から弁護士や警察に相談する際にも証拠があった方が有利ですので、連絡があった場合や再びお店に呼び出された場合にもスマートフォンなどで録音しておくと解決までスムーズです。

録音が難しい状況では、言われた言葉をできるだけ忠実にメモしておくと有効です。

風俗店との会話の内容や、相手が言った言葉等によって、恐喝や脅迫の証拠として活用できる可能性があります。

直接的な言葉を使うのは避けているかもしれませんが、内容や状況から脅迫罪や恐喝罪として成立する可能性があります。

また、お店の人から暴行を受けた場合には、写真を撮って証拠を残し、多少の傷でも病院で医者に診てもらい、診断書を書いてもらうことが重要です。

表面上には見えない傷でも、首や肩を痛めたといった診断でも威圧的に脅された精神的ショックで精神的にダメージを受けた場合でも構いません。

⑷警察や弁護士に相談する

風俗店から恐喝や脅迫を受けた場合には、迅速に警察や弁護士に相談することが重要です。

レイプに及んでしまったというお客さんに問題がある場合には、弁護士に相談することによって、迷惑防止条例違反等のリスクを避けることができますが、お客さんに何の問題がなくレイプされたと事実無根の疑いをかけられている場合、警察に相談すれば、恐喝罪や脅迫罪が成立する可能性があります。

穏便に解決することを目的とするならば、弁護士に介入してもらい、示談交渉をしてもらうのがいいと言えます。

4 強制性交等罪で逮捕されると

⑴逮捕

レイプによって、女性スタッフや風俗店に通報され、警察官に逮捕された場合には、被疑者として身柄を拘束され、取り調べを受けることになります。

取り調べで、事件の状況や事実確認の聞き取りは行われます。

その後、逮捕から48時間以内に、事件の被疑者・書類・証拠物を検察官に送致します。

逮捕期間中の被疑者との面会は、弁護士以外は認められません。

⑵検察で取り調べ

検察官に事件が送致されると、事件が検察官のもとに来てから24時間以内に、検察官が勾留請求をするか釈放するかを決めることになります。

勾留請求をされた場合、裁判官から被疑者に対して事件の認否等について質問する機会が設けられ(勾留質問)、その上で裁判官が被疑者を勾留するか否かの判断をします。

現状として、検察官が勾留請求をした場合、ほとんどの事件で勾留が認められています。

特に強制性交等などの風俗トラブル事件の場合には、被害者との接触の危険を避けるため、勾留が認められやすい傾向にあります。

⑶勾留期間

勾留期間は10日間ですが、その後延長が認められるとさらに10日間勾留が継続するので、起訴前は逮捕されてから最長で23日間の身体拘束を受けることになります。

⑷検察官による終局処分

検察官は、逮捕後23日間の勾留期間が満期に起訴・不起訴を判断します。

罰金刑が定められている犯罪で、事実を認めていて軽微な事件である場合には、罰金刑を求刑する略式起訴が行われる可能性が高いですが、一方、懲役刑を求刑する場合には、公判請求が行われます。

なお、強制性交等罪は、最も重い性犯罪であり、罰金刑が定められていないため、終局処分までの間に示談で告訴が取り下げられない限り、公判請求となります。

検察官によって起訴された場合は、刑事事件として裁判手続きが行われ、被疑者は被告人となります。

不起訴になると刑事事件にはならず、身柄を解放されて、再逮捕されるかのせいは低くなります。

⑸公判

刑事裁判は、検察官の基礎から12ヶ月後に公開の法廷で行われます。

公判では、検察弁護人それぞれの証拠をもとに裁判官が判決を下します。

有罪または無罪の言い渡しになり、有罪の場合は刑期などが言い渡されます。また、執行猶予が付されるケースもあります。

執行猶予とは、被告人の状況を踏まえ社会内での更生が期待できる場合に、刑の執行を猶予する制度です。

執行猶予付きの懲役刑が言い渡されていた場合において、罪を犯すことなく執行猶予の期間が経過し、刑の執行を免除されれば、刑務所に行く必要はなくなります。

5 本番強要を弁護士に相談するメリット

風俗トラブルを起こしてしまったら、決して自分自身で解決しようと焦らずに、風俗トラブルに強い弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼するメリットを説明していきます。

⑴お店側とのやりとりを任せられる

風俗トラブルを起こしてしまうと、何度も連絡がきたり、自宅に押しかけてこられたりすることがあります。風俗店によっては、本番強要に対して、お金を請求してくることもあります。その要求をしてくる中で、威圧的な言動を用いて、お金を支払うようにしてきます。

そうなると私生活への悪影響も及ぼしますし、見た目の怖い男性から恐喝のような発言をされるとかなり恐怖心を感じて、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。

このようなやりとりも弁護士へ依頼すれば、直接自分自身でする必要がなくなり、お店側とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。

恐怖心や後ろめたさからお店側からの連絡を無視し続けていても、精神的にストレスを与えますし、時間が経つにつれ、穏便に解決することが難しくなります。

⑵適正な示談を結べる

トラブルが起きた際に、裁判によらずに、当事者が話し合って解決する方法があります。一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。

自分自身で示談を交渉すれば、トラブルなく解決できるのではないかとお考えの人もいると思いますが、示談内容・示談金額について効果的な示談を結ばなければ、再び金銭を請求されるなど不利な立場になることもあります。

しかし、風俗トラブルを弁護士に依頼することによって、弁護士が当事者に代わって、女性スタッフやお店と示談交渉をしてくれます。

そして、弁護士が示談交渉することによってトラブルの事案や状況によって妥当な示談金額を交渉して、適切な内容で法的に効力のある示談書を作成することができます。

もし、既にお店側が用意した示談書などの書類にサインしてしまっている場合には、事実確認を行い、改めて示談金の減額や今後のトラブルを防止するために交渉します。

お店との話し合いを重ねて相手の同意のもと示談書を締結するため、再要求される事も防止します。

⑶不当な請求を拒否できる

弁護士に依頼すると、風俗トラブルでお店側が金銭などを要求してきた際に、その請求が妥当なものか判断して、場合によっては請求を拒否することができます。

風俗トラブルの当事者はお店ではなく被害者である女性スタッフであり、お店の請求自体が法的には根拠のないケースが多いです。

また、当事者である女性スタッフからの請求があっても、法外な適切ではない慰謝料などを請求された場合には妥当な金額になるように減額を交渉します。

⑷刑事事件になるのを防げる

担当弁護士がご本人に代わってお店側や従業員などと示談交渉を行ったり、煩雑になりがちな警察に働きかけを行ったりすることによって、警察沙汰への発展を防止できる可能性が高まります。

示談交渉を弁護士に依頼すれば、警察に被害届や告訴状を出さないことを条件に加えた示談書を作成します。

そのため、刑事事件になることを防げる可能性が高くなります。

もしお店や従業員が被害届や告訴状を提出して刑事事件になった場合でも、示談が成立していれば、逮捕や起訴または懲役を免れる可能性が高くなります。

万一に、逮捕されてしまった後でも弁護士に早急に示談交渉を成立してもらうことで、送検もしくは起訴される前に早期釈放される可能性が高くなります。

警察や検察というのは、事件の加害者の処分を決める際に、被害者が加害者に対して、どれだけ強く処分してほしいと思っているのかという被害者の処罰感情を考慮しています。

そのために、すでに示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、被害者が加害者に対してそれほど強い処罰を望んでいるわけではないと考慮して、釈放が早くなったり、不起訴処分になったりと刑事裁判を回避できる可能性が非常に高くなります。

また、刑事裁判においても、被害者の感情というのは大きく考慮されます。したがって、示談が成立していると分かれば、実刑で刑務所に行かねばならないところが執行猶予になり刑務所に行かずに済んだり、実刑となっても刑期が短くなって刑務所に入る年数が少なくなるケースが多いです。

⑸家族や勤務先にバレない

家族や勤務先に風俗トラブルについて、知られてしまうと信用を落としかねません。

それまでのお互いの関係性が崩壊してしまう可能性もあると思います。

しかし、早い段階で弁護士に依頼すれば、代理人としてお店や女性スタッフに対して、本人やその家族、会社に連絡しないように求めます。

それに違反した場合の違約金や処罰を示談書に盛り込むことによって、外部に漏らすことを防ぎます。

自分自身で警告するよりも弁護士の方が抑止力が高いですし、お店によっては弁護士との交渉ごとに慣れている場合もありますので、訴えられるような行動は取らない可能性が高くなります。

そのため、弁護士に依頼することでお店との交渉を代わりにしてくれ家族や勤務先にバレずに解決できる可能性が高くなります。

6 まとめ

以上で、風俗での強制性交等罪で逮捕された場合の対処法や示談交渉を弁護士に依頼するメリットについて解説しました。

風俗トラブルに巻き込まれた場合には、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

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