お店での本番行為は逮捕されるのか
- コラム
デリヘルなどの風俗店を利用した際に、風俗嬢と本番行為に及んだ場合は、何らかの罪に当たり、逮捕される可能性があるのでしょうか。
風俗嬢に被害届を提出しますなどと言われたら、不安になると思います。
それを脅しに利用して、金銭を要求されるケースもありますので、風俗嬢との本番行為が本当に犯罪行為として逮捕されるのかをこの記事では解説していきます。
1 本番行為は犯罪として逮捕されるのか
売春防止法
(定義)
第二条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
(売春の禁止)
第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
引用元:売春防止法
第2条は、売春とはお金や物ををもらったり、もらう約束をして本番行為をするという行為を指します。
第3条は、誰もが売春したり、売春相手になってはいけないということを指します。
売春防止法第2条、第3条では、お金や物をもらったり、貰う約束をして、不特定の人と性交を禁止しています。
したがって、女性スタッフと本番行為をすれば売春防止法違反となり、犯罪行為ということになります。
しかし、売春防止法には罰則規定がないため、違法な犯罪ではあるが、警察に逮捕されることはないということになります。
これには、「売春せざるを得ないような状況の人は保護しなければならない」という考えがあるからです。
この法律は日本がまだ豊かではない1956年にできたもので、生きていくために仕方なく体を売る女性を保護するために、罰するのは酷であるという考えがありました。
また、密室内で本番行為があったことを立証するのが困難である事も理由とされています。
女性に売春をあっせんしたり、売春を業とすることは犯罪として逮捕されます。
ただ、本番行為について女性スタッフの同意がなかった場合は、強制性交等罪で犯罪として警察に逮捕される可能性も高くなります。
(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法第177条は強姦罪という名称でしたが、平成29年の改正で強制性交等罪に変更になりました。
強制性交等罪が成立するかどうかは、暴行や脅迫の程度によります。
この暴行や脅迫の程度は、最高裁判例で「相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるもの」とされています。
つまり、女性スタッフが抵抗できないくらい、もしくは抵抗するのが非常に難しい程度の暴力や脅迫によって、本番行為を行うと、強制性交等罪が成立するということです。
このような脅迫や暴行の上で、挿入まで至らなかった場合には、未遂罪が成立します。そして、その暴行で女性スタッフが怪我をしたら、刑法第181条2項の強姦致傷罪が成立します。
例えば、「サービスの最中に意図せず滑って挿入してしまった」「本番行為をしたいと依頼したところ無視or断られたが、我慢できずに暴行などは一切せずに挿入してしまった」というパターンもよくありますが、強制性交等罪が成立する条件である脅迫や暴行を満たしていないということになりますので、逮捕されることはありません。
しかし、女性スタッフとの合意のもと本番行為に及んだにも関わらず、サービス後に強引に本番行為を強要されたと主張が変わったり、本番行為をしていないのに、挿入されたとお店に報告されたりというケースもあります。
このようなケースでは冤罪になりかねませんので、本番行為は絶対にするべきではないです。
以上のように、風俗での本番行為は女性スタッフが反抗するのが困難なほどの暴力や脅しをしなければ、逮捕される心配がないことを説明しました。
しかし、重複しますが、女性スタッフにとの主張の食い違いや同意なく無理やりされたと言われてしまえば、冤罪による逮捕の可能性がないとは言えません。
2 本番行為のトラブル
それでは風俗店での本番行為はは女性スタッフが反抗するのが困難なほどの暴力や脅しをしなければ、逮捕されないということが分かりましたが、どのようなトラブルが発生する可能性があるのかというのを紹介していきます。
⑴罰金
女性スタッフと合意の上で本番行為に及んだ場合でも、お店から本番行為を禁止しているため罰金を支払うように要求されることがあります。
ホームページの利用規約やお店の注意書きに本番行為の禁止とその罰金について書いてあるケースが多いようです。
また、風俗店の利用時にサインされる誓約書に不当に高額な罰金が記載されており、その誓約書に基づいて、罰金を支払うように要求されるケースもあります。
しかし、そうした罰金制度は一店舗が独自に定めた物であり、法的な効力はありません。そのため、風俗店側の要求通りの罰金の支払い義務はありません。
もし、女性スタッフの合意があるか確実ではない状態で本番行為に及んでしまった場合には、慰謝料や損害賠償を支払う必要が生じるかもしれません。
しかし、その慰謝料や損害賠償の金額が適切なものか不当であるかという判断がご自身では困難だと思いますので、弁護士に相談する必要があると考えます。
⑵慰謝料や損害賠償を請求される
上でお話したように、本番行為のことでお店や女性スタッフから慰謝料や損害賠償として、金銭を要求されることもあります。
しかし、女性スタッフとの合意のもと本番行為に及んだのであれば、慰謝料や損害賠償を支払う義務はない可能性もあります。
⑶示談の締結を迫られる
女性スタッフの合意を得た上で本番行為をしたケースでも、合意なく無理やり挿入されたと主張が一変して、示談金の支払いを求められることもあります。
そして、お客さんが不利になるよう不備のある示談書にサインを強要して、一方的に不当な内容の示談を成立させようとしてくるケースも考えられます。
事実に反することが示談書に記載されていたり、示談で決まった以外の債権責務がないことを確認する条項や口外禁止条項などを故意的に記載していないことでお店側が有利に示談を成立させようとしてくるのです。
示談書にサインをして、一度示談が成立してしまうと後から取り消すことが難しくなってしまいます。
⑷警察に通報すると脅される
お店側から警察に通報する、刑事事件にすると脅されるケースもありますが、上で解説したように合意の上で本番行為に及んだのであれば、売春防止法で処罰されるのはお店側です。
お客さんは逮捕されることがありませんので、そのような脅しを受け入れる必要はありません。女性スタッフの同意の上で本番行為に及んだので場合は、全く脅しになっていません。
もし、合意なく本番行為を行なったとなると強制性交等罪で処罰される可能性がありますので、合意なく無理やりされたと女性スタッフに主張された場合には、そのまま認めることはせずに、弁護士に相談するべきです。
⑸家族にバラすと脅される
女性スタッフの合意なく無理やり本番行為をされたとして、罰金や慰謝料の支払いを要求してきます。
その際に、払わなければ家族や勤務先にバラすと脅しをかけてくることもあります。
これに関しては、お店側としてはお金を巻き上げたいというのが目的であり、家族や会社に連絡することによって、お店側にメリットがあるわけではありません。
脅しの切り札として、利用しているだけなので、このような脅しに屈することはありません。
バラしてしまうと脅すための切り札がなくなってしまうため、そう簡単にバラさないと考えます。
⑹女性スタッフが妊娠した
女性スタッフとの合意の上で、本番行為を行なったとしても、「女性スタッフが妊娠してしまったから、中絶費用や検査費用を払え」と請求されることもあります。
しかし、女性スタッフが自分と本番行為を行なったということは、他の男性客とも本番行為をこなっている可能性があり、妊娠していたとしても、父親が誰かは不確定であると言えます。
また、そもそも妊娠という事実はなく、お金を巻き上げようとしているだけの可能性もあります。
ただ、女性スタッフが本番行為に同意したとしても、妊娠することまでは許容していないと言えますので、もし妊娠という事実確認ができ、自分自身が父親であると判明したならば、中絶費用や養育費等を支払う必要は発生する可能性があります。
もし、自分自身が本当に父親であるという事実確認ができ、出産した場合には、法律上は養育費の支払い義務が生じてしまいます。それが、風俗店での性行為だったとしても、法律上の扶養義務は免れません。
女性スタッフの妊娠が発覚したと報告された場合には、妊娠は事実なのか、妊娠しているとして自信が父親であるのかを事実確認をする必要があります。
事実が確認できるまで中絶費用や検査費用、慰謝料等は払う必要ありません。
妊娠証明書の提出を求めるなどして事実確認を行いましょう。
3 逮捕以外の不安要素
以上で、女性スタッフの合意がなく暴行や脅迫を用いて本番行為に及んだ場合でなければ、逮捕されるリスクがかなり低いことがわかっていただけたかと思います。
しかし、身分証などの個人情報を知られてしまっているため、何をされるのかわからないという不安が残ります。
会社や家族に連絡してきたり、押しかけれくることも考えられます。
その場合も、風俗トラブルをバラすようなことはしませんが、プレッシャーをかけてきます。
このようなケースでは、女性スタッフとの合意のもとの本番行為だったとしても、解決金を支払って終わらせるという方法があります。
次で、示談について解説していきます。
4 示談について
⑴示談書の内容
示談書は、示談した内容を記載した文書のことで示談が成立したと言う記録を残すものです。
お互いにサインした示談書に不備や不足があっては、今後のトラブルの発生の元になりますので、必ず入れるべき条項というものが存在します。
・トラブルについてお互いに第三者に口外しないことを約束する秘密保持条項
・示談書で定めた以外の債権責務がないことを確認する精算条項
・お互いに連絡や接触しないことを約束する禁止条項
・他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める違約金条項
・被害届を出さないことを約束する条項
・いくらの示談金額をどのような方法でいつまでに支払うのか
・誰とのどのようなトラブルを示談するのか
⑵示談する相手
本番行為というトラブルの当事者はお客さんと女性スタッフです。
示談相手はお店ではなく、女性スタッフですので、お店と示談書を交わしても女性スタッフと示談を交わしたことになりません。
そのため、女性スタッフが被害届を警察に提出したり、示談金を別に要求してくることが可能であるということです。
5 まとめ
風俗店で本番行為に及んだ場合に、お客さん側が売春防止法で罰せられることはないということがご理解いただけたかと思います。
しかし、本当に女性スタッフの合意があったとしても、その後に合意はなかったとして金銭を要求してきたり、望まない妊娠をさせてしまったり、脅されたりとトラブルになってしまうリスクがあります。
また、合意がない状態で本番行為に及んだケースでは強制性交罪等の重い罪が科せられる可能性があります。
以上のことを考えると、合意があったとしても本番行為は避けた方がいいと言えます。
本番行為を行なってしまい不安なことがある方、家族が本番行為で逮捕されてしまった方など、風俗でのトラブルでお困りの方は是非弁護士にご相談ください。
風俗トラブルの解決実績豊富な弁護士が今後のアドバイスや解決へ向けて代わりに示談交渉を行ってくれます。
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