お店での盗聴・録音は犯罪なのか
- コラム
風俗店とお客さんとの間に、盗聴や盗撮、本番行為についてのトラブルは多く発生しています。
今回の記事では、特に風俗店での盗聴について犯罪にが成立するのか、成立するならばどのような犯罪か、金銭を請求された場合はどう対応するべきかについて、解説します。
1 風俗での盗聴が起こすリスク
風俗店を利用している際に、こっそり盗聴しようと考えるお客さんもいるかもしれません。
しかし、操作音がなってしまったり、録音機器が見つかってしまって、盗聴がバレることも少なくありません。
風俗嬢やお店に盗聴行為がバレてしまった場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか。
⑴慰謝料や損害賠償金を要求される
風俗店では、お客さんの盗撮や盗聴を禁止する張り紙や利用規約を掲載しているところがあります。
お店に 盗聴行為がバレた場合には、罰金として金銭の支払いを要求される可能性があります。
また、盗撮されたことによって女性スタッフが精神的ダメージを負い、休まないといけない状態になれば、売上が落ちたと損害賠償や慰謝料を求められる可能性があります。
⑵家族や会社に連絡される
上記で風俗店で盗聴をしたことによって、慰謝料や損害賠償を請求される可能性があると説明しましたが、その際に支払わなければ家族や勤務先にバラすと脅されたり、払わないことで家族や会社にもお店からお金を支払うように連絡をされることがあります。
⑶被害届を出される
お店に自分の個人情報を知られてしまうと警察に被害届を提出され、警察沙汰にされる可能性もあります。
そうなれば、慰謝料や損害賠償の請求だけではなく、犯罪として刑事罰を受けることになるかもしれません。
2 盗聴は犯罪になるのか
盗聴とは一般的に、レコード機能がある機器を仕掛けて録音し、当事者以外の第三者が会話を盗み聞くことです。
風俗にて、性的サービスを受けているときに盗聴すると、犯罪が成立して処罰を受けることになるのでしょうか。
⑴「盗聴罪」はない
盗撮であれば、軽犯罪法違反や都道府県の迷惑防止条例違反などの罪が成立します。しかし、盗聴はモラル的にしてはならないことではあるものの、刑法などの法律に「盗聴罪」といった犯罪はありません。
一般的な盗聴に対しては、取り締まる法律がないため、犯罪とはなりません。自宅に盗聴器や録音機を仕掛けることも、赤の他人が設置した盗聴器の電波を受信機で拾い聞くことも違法ではありません。
まず、そもそも自分の会話を相手の同意なく録音することは、「秘密録音」と呼ばれ、会話の当事者ではない第三者が録音する「盗聴」とは区別されています。
そして、風俗でお客さんが女性スタッフとの性的サービスを録音することは、会話の当事者であるため、秘密録音ということになります。
つまり、風俗での録音は犯罪にならないということです。
したがって、盗聴したことを罰せられることはありませんが、盗聴するためにした盗聴の前後のことが違法となり罰せられることがあります。
⑵建造物侵入罪
(住居侵入等)
第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
正当な理由がなく他人が管理する建造物に侵入した場合、建造物侵入罪が成立します。
盗聴目的で立ち入ったとなれば、正当な理由はないと判断でき、デリヘルを呼んだラブホテルや店舗型風俗の施設は建造物に該当します。
建造物侵入罪が成立すれば、3年以下の懲役または10万円以下の罰金となる可能性があります。
なお、デリヘルを自宅に呼んだ場合は、お客さんが管理者であるため、建造物侵入罪は成立しません。
しかし、実際のところ、建造物侵入罪が成立するとはいえ、 風俗で性的サービスを録音することでの逮捕事例がほとんどありません。
他人の会話を盗聴する目的で建物に侵入したケースと比べて、違法性が低いという警察の判断があるといえます。
⑶器物損壊罪・建造物損壊罪
盗聴器を仕掛けるために、施設の備品などを壊した場合には、器物損壊罪や建造物損壊罪となる可能性があります。
器物損壊罪が成立すれば3年以下の懲役または30万円以下の罰金、建造物損壊罪ならば5年以下の懲役に処せられます。
⑷その他
固定回線を盗聴すると有線電気通信法9条違反になり、電話会社等の電気通信事業者が取り扱いに関する通話を盗聴すると電気通信事業法4条違反として犯罪となります。また、無線通信を傍受しその通話内容を第三者に漏らせば電波法59条違反となります。
しかし、風俗での盗聴は、お客がボイスレコーダーやスマホで音声を録音する方式がほとんどですので、有線・無線の通信を盗聴した場合に適用される上記の法律には触れないと考えられます。
3 盗聴の罰金や慰謝料について
普通であれば、風俗店が盗聴したデータをその場で削除させて、お客さんを出入り禁止にして、終わらせることがほとんどです。
しかし、お店によっては罰金や慰謝料を請求してくることがあります。
罰金については、一切支払う義務はありません。
罰金は、刑事罰として課すものであり、一民間のお店がお客さんに対して、課すことはできません。
HPや利用規約に罰金について規定が書かれていたとしても、お店としては抑止力として記載しているケースもあります。
次に慰謝料については、支払う義務が生じます。
風俗で盗聴することは女性スタッフのプライバシー権侵害となり、慰謝料を払う必要があるといえます。
民放709条では、故意または過失によって他人の権利を侵害した者は賠償責任を負うと法律で規定されています。
ただし、盗聴というのは盗撮と違ってあくまでも声だけが記録されるものであり、女性スタッフが受ける精神的苦痛も盗撮と比べて低いと考えられます。
常習犯であったり、盗聴したデータをネットに流出するなど悪用していない限り、慰謝料の相場は低いと考えられます。
4 請求された時の対処法
罰金については支払う必要がなく、慰謝料についてはケースにより少額の支払いの必要性が生じると解説しましたが、罰金を請求されたり、相場以上に高額な慰謝料を脅迫して溶融してくることは十分に考えられます。
それでは、そのような場合にどうのように対処すればいいかについて説明していきます。
⑴その場でサインしない
お店が示談書を提示してくることがあります。
しかし、お店が用意した書類は、お客さんに対して不利になるように不備があったり、その示談書をもとに金銭を再請求してくる恐れもあります。
その書類がお客さんにとって不利益なものではないのか適切なものかどうかという判断は、困難だと思いますので、その場ではサインをせずに弁護士にご相談していただくことが重要です。
⑵身分証を渡さない
お店側が個人情報を握るために、身分証を出せと要求されることもありますが、免許証や会社の名刺などを差し出してはいけません。
返してもらえなかったり、コピーを取られることが考えられます。
⑶証拠を残す
お店側の人と話すときはスマートフォン等で録音しておくべきです。
盗聴をしたことによってトラブルになっているので、録音していいのかと考えてしまうかもしれませんが、脅迫や恐喝されたケースで有力な証拠にすることができます。
5 弁護士に相談するメリット
風俗で盗聴してしまったことによりトラブルになっている場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。
以下では、弁護士に相談することのメリットを紹介していきます。
⑴お店側とのやりとりを任せられる
風俗トラブルを起こしてしまうと、何度も連絡がきたり、自宅に押しかけてこられたりすることがあります。
そうなると私生活への悪影響も及ぼしますし、見た目の怖い男性から恐喝のような発言をされるとかなり恐怖心を感じて、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。
このようなやりとりも弁護士へ依頼すれば、直接自分自身でする必要がなくなり、お店側とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。
恐怖心や後ろめたさからお店側からの連絡を無視し続けていても、精神的にストレスを与えますし、時間が経つにつれ、穏便に解決することが難しくなります。
⑵適正な示談を結べる
トラブルが起きた際に、裁判によらずに、当事者が話し合って解決する方法があります。一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。
自分自身で示談を交渉すれば、トラブルなく解決できるのではないかとお考えの人もいると思いますが、示談内容・示談金額について効果的な示談を結ばなければ、再び金銭を請求されるなど不利な立場になることもあります。
しかし、風俗トラブルを弁護士に依頼することによって、弁護士が当事者に代わって、女性スタッフやお店と示談交渉をしてくれます。
そして、弁護士が示談交渉することによってトラブルの事案や状況によって妥当な示談金額を交渉して、適切な内容で法的に効力のある示談書を作成することができます。
もし、既にお店側が用意した示談書などの書類にサインしてしまっている場合には、事実確認を行い、改めて示談金の減額や今後のトラブルを防止するために交渉します。
お店との話し合いを重ねて相手の同意のもと示談書を締結するため、再要求される事も防止します。
⑶不当な請求を拒否できる
弁護士に依頼すると、風俗トラブルでお店側が金銭などを要求してきた際に、その請求が妥当なものか判断して、場合によっては請求を拒否することができます。
風俗トラブルの当事者はお店ではなく被害者である女性スタッフであり、お店の請求自体が法的には根拠のないケースが多いです。
また、当事者である女性スタッフからの請求があっても、法外な適切ではない慰謝料などを請求された場合には妥当な金額になるように減額を交渉します。
⑷刑事事件になるのを防げる
担当弁護士がご本人に代わってお店側や従業員などと示談交渉を行ったり、警察への働きかけを行ったりすることによって、警察沙汰への発展を防止できる可能性が高まります。
示談交渉を弁護士に依頼すれば、警察に被害届や告訴状を出さないことを条件に加えた示談書を作成します。
そのため、刑事事件になることを防げる可能性が高くなります。
もし、お店や従業員が被害届や告訴状を提出して刑事事件になった場合でも、示談が成立していれば、逮捕や起訴または懲役を免れる可能性が高くなります。
万一に、逮捕されてしまった後でも弁護士に早急に示談交渉を成立してもらうことで、送検もしくは起訴される前に早期釈放される可能性が高くなります。
警察や検察というのは、事件の加害者の処分を決める際に、被害者が加害者に対して、どれだけ強く処分してほしいと思っているのかという被害者の処罰感情を考慮しています。
そのために、すでに示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、被害者が加害者に対してそれほど強い処罰を望んでいるわけではないと考慮して、釈放が早くなったり、不起訴処分になったりと刑事裁判を回避できる可能性が非常に高くなります。
⑸家族や勤務先にバレない
家族や勤務先に風俗トラブルについて、知られてしまうと信用を落としかねません。
しかし、早い段階で弁護士に依頼すれば、代理人としてお店や女性スタッフに対して、本人やその家族、会社に連絡しないように求めます。
それに違反した場合の違約金や処罰を示談書に盛り込むことによって、外部に漏らすことを防ぎます。
自分自身で警告するよりも弁護士の方が抑止力が高いですし、お店によっては弁護士との交渉ごとに慣れている場合もありますので、訴えられるような行動は取らない可能性が高くなります。
そのため、弁護士に依頼することでお店との交渉を代わりにしてくれ家族や勤務先にバレずに解決できる可能性が高くなります。
6 まとめ
風俗での盗聴は逮捕される可能性は低いものの、適切な示談を締結しなければ、後のトラブルにつながったり、家族や勤務先にバレてしまうこと考えられます。
そして、トラブルの事態をさらに悪くしないために適切な示談をすることが必要です。
盗聴で風俗店とトラブルになった際は、ぜひ弊所へご相談ください。
トラブルを後から蒸し返されることがないように、家族に知られないように解決できる可能性があります。
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