親告罪とは(強制性交等罪の非親告罪化)

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

風俗店における本番行為によるトラブルが多く発生していますが、相手の同意を得ていない状態での本番行為は強制性交等罪が成立する可能性があります。

今回の記事では、親告罪について、強姦罪が強制性交等罪に改正したことで、親告罪から非親告罪になった違いや該当する行為をしてしまった場合の対処法について解説していきます。

1 強姦罪から強制性交等罪へ改正

強制わいせつ罪等の性犯罪を厳罰化する刑法改正案が2017623日に公布されて、同年713日に施行されました。

110年ぶりの大幅な改正となり、「強姦罪」から「強制性交等罪」に変更されたことが注目を集めました。

そこで、強姦罪は親告罪でしたが、強制性交等罪は非親告罪となりました。

2 親告罪とは

親告罪とは検察官が被疑者を起訴するにあたって、被害者の告訴が必要となる犯罪のことを言います。

そのような犯罪で、告訴がないままに起訴されると、裁判は訴訟条件を欠くものとして判決で公訴棄却となりますので、たとえ有罪の場合であっても、処罰されることはありません。

親告罪の例として、強制わいせつ罪などの性犯罪や器物損壊罪が挙げられます。

裁判や捜査で事件が明らかになることによって、被害者のプライバシーが害される恐れがあるためです。また、事件の中には司法が介入しない方が良いものも存在するためです。

このように、強姦罪では親告罪でしたが、親告罪とされていることで本来処罰されるべき性犯罪が処罰されていないと言われていました。また、告訴するかどうかという選択を被害者に迫っているという点で精神的に更なる負担をかけているということで、親告罪だった強姦罪を見直し、強制性交等罪は非親告罪と変更されました。

3強制性交等罪とは

⑴強制性交等罪の条文

刑法177条「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」

強制性交等とは,被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫を用いて,性交,肛門性交,口腔性交をすることです。

また、被害者が13歳未満の者であれば,暴行や脅迫がなくとも,強制性交等罪が成立します。さらに、相手の同意があったとしても,被害者が13歳未満であれば,強制性交等罪が成立するとしています。

強制性交等については,刑法第177条で規定されており,犯罪の主体・客体ともに性別の区別はなくなりました(なお、被害者が泥酔状態等にあることに乗じて,性交等をする準強制性交等という犯罪もあります。刑法第178条第2項)。

⑵強制性交等罪の構成要件

「暴行」とは、人の身体に対して有形力を行使すること、「脅迫」とは、人の生命、身体等に害を加えると伝えることです。

被害者の年齢・精神状態・健康状態、犯行の時刻や場所、容態等を考慮して、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度かどうかを判断されます。

性交等とは、性交、肛門性交、口腔成功のことを指します。男性のみならず、女性が主体となって他の男性にこれらの行為をさせた場合、男性が男性にこれらの行為をした場合を処罰の対象となります。

⑶強制性交等罪の罰則

(強制性交等)

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

引用元:刑法 第177

強制性交等罪の罰則は5年以上の有期懲役とされており、非常に重い罪です。有期懲役の上限は20年です。

なお、執行猶予付き判決を受けるには3年以下の懲役を受けなければなりません。強制性交等罪の懲役の下限は5年ですから、基本的に執行猶予付き判決を受けられない、つまり実刑になります。

4  旧強姦罪の改正

2017年に施行された改正刑法によって、旧強姦罪が強制性交等罪に変更されたポイントを解説します。

⑴女性だけではなく男性も被害者の対象になった

強姦とは、暴力行為によって女性を犯すという意味がありますが、改正で被害者の適用範囲が拡大され、性別は関係ないことなりました。被害者が誰であれ、構成要件に該当する行為があれば、犯罪が成立することになります。

構成要件上、男性同士であっても強制性交等罪は成立するということになりますが、女性同士の場合には性交等ができないため強制性交等罪では処罰対象となりません。

⑵被害の範囲が拡大された

改正前の強姦罪では、男性器が女性器に挿入されることを要件としていました。肛門性交や口腔性交では強姦罪の要件を満たしていないため、強姦罪が成立することはありませんでした。

しかし、暴行または脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔性交を行えば、強制性交等罪が成立することになりました。

⑶刑が重くなった

改正前の強姦罪は3年以上20年以下の有期懲役でしたが、強姦罪の悪質性に鑑みて、3年以上という法定刑は軽過ぎるのではないかと指摘されてきたため厳罰化されました。強制性交等罪は5年以上の有期懲役となりました。

執行猶予が付される可能性があるのは、懲役3年以下の場合のため、強制性交等罪で執行猶予を獲得することは、これまで以上に難しくなりました。

⑷被害者の告訴が不要になった

これまでの強姦罪では、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪となっていましたが、非親告罪となり、被害者の告訴なしに起訴できるようになりました。

被害者に告訴という行為を求めるのは、被害者の過度な精神的負担になっているのではないかということで、非親告罪になりました。

5 強制性交等罪の可能性がある場合

強制性交等罪が非親告罪になったとはいえ、被害者が望んでいない基礎を検察官の判断でするということはなかなかありません。裁判や捜査で、事件の詳細が公になり、供述も求められて、被害者の負担は大きいはずです。

示談が成立して、被害届や告訴の取り消しがされると、検察官が起訴を見送る可能性が十分にあります。

そのため、示談を成立することが非常に重要だと言えます。

そして、強制性交等罪に該当するような事件の場合、加害者が被害者と直接接触するようなことがあってはなりません。

被害者に直接接触することは、捜査機関に証拠の隠蔽を疑われる可能性もあります。

被害者の心情を十分に理解することが必要です。

そのため、このような事件での示談は弁護士に依頼する必要があります。

被害者が加害者の連絡などには応じないが、弁護士を通してであれば、応じてくれるということもあります。

6 示談を弁護士に依頼するメリット

⑴お店側とのやりとりを任せられる

風俗トラブルを起こしてしまうと、何度も連絡がきたり、自宅に押しかけてこられたりすることがあります。風俗店によっては、本番強要に対して、お金を請求してくることもあります。その要求をしてくる中で、威圧的な言動を用いて、お金を支払うようにしてきます。

そうなると私生活への悪影響も及ぼしますし、見た目の怖い男性から恐喝のような発言をされるとかなり恐怖心を感じて、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。

このようなやりとりも弁護士へ依頼すれば、直接自分自身でする必要がなくなり、お店側とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。

恐怖心や後ろめたさからお店側からの連絡を無視し続けていても、精神的にストレスを与えますし、時間が経つにつれ、穏便に解決することが難しくなります。

⑵適正な示談を結べる

トラブルが起きた際に、裁判によらずに、当事者が話し合って解決する方法があります。一般的に、こうして当事者による合意で問題を解決することを「示談」と呼びます。

自分自身で示談を交渉すれば、トラブルなく解決できるのではないかとお考えの人もいると思いますが、示談内容・示談金額について効果的な示談を結ばなければ、再び金銭を請求されるなど不利な立場になることもあります。

しかし、風俗トラブルを弁護士に依頼することによって、弁護士が当事者に代わって、女性スタッフやお店と示談交渉をしてくれます。

そして、弁護士が示談交渉することによってトラブルの事案や状況によって妥当な示談金額を交渉して、適切な内容で法的に効力のある示談書を作成することができます。

もし、既にお店側が用意した示談書などの書類にサインしてしまっている場合には、事実確認を行い、改めて示談金の減額や今後のトラブルを防止するために交渉します。

お店との話し合いを重ねて相手の同意のもと示談書を締結するため、再要求される事も防止します。

⑶不当な請求を拒否できる

弁護士に依頼すると、風俗トラブルでお店側が金銭などを要求してきた際に、その請求が妥当なものか判断して、場合によっては請求を拒否することができます。

風俗トラブルの当事者はお店ではなく被害者である女性スタッフであり、お店の請求自体が法的には根拠のないケースが多いです。

また、当事者である女性スタッフからの請求があっても、法外な適切ではない慰謝料などを請求された場合には妥当な金額になるように減額を交渉します。

⑷刑事事件になるのを防げる

担当弁護士がご本人に代わってお店側や従業員などと示談交渉を行ったり、煩雑になりがちな警察に働きかけを行ったりすることによって、警察沙汰への発展を防止できる可能性が高まります。

示談交渉を弁護士に依頼すれば、警察に被害届や告訴状を出さないことを条件に加えた示談書を作成します。

そのため、刑事事件になることを防げる可能性が高くなります。

もしお店や従業員が被害届や告訴状を提出して刑事事件になった場合でも、示談が成立していれば、逮捕や起訴または懲役を免れる可能性が高くなります。

万一に、逮捕されてしまった後でも弁護士に早急に示談交渉を成立してもらうことで、送検もしくは起訴される前に早期釈放される可能性が高くなります。

警察や検察というのは、事件の加害者の処分を決める際に、被害者が加害者に対して、どれだけ強く処分してほしいと思っているのかという被害者の処罰感情を考慮しています。

そのために、すでに示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、被害者が加害者に対してそれほど強い処罰を望んでいるわけではないと考慮して、釈放が早くなったり、不起訴処分になったりと刑事裁判を回避できる可能性が非常に高くなります。

また、刑事裁判においても、被害者の感情というのは大きく考慮されます。したがって、示談が成立していると分かれば、実刑で刑務所に行かねばならないところが執行猶予になり刑務所に行かずに済んだり、実刑となっても刑期が短くなって刑務所に入る年数が少なくなるケースが多いです。

⑸家族や勤務先にバレない

家族や勤務先に風俗トラブルについて、知られてしまうと信用を落としかねません。

それまでのお互いの関係性が崩壊してしまう可能性もあると思います。

しかし、早い段階で弁護士に依頼すれば、代理人としてお店や女性スタッフに対して、本人やその家族、会社に連絡しないように求めます。

それに違反した場合の違約金や処罰を示談書に盛り込むことによって、外部に漏らすことを防ぎます。

自分自身で警告するよりも弁護士の方が抑止力が高いですし、お店によっては弁護士との交渉ごとに慣れている場合もありますので、訴えられるような行動は取らない可能性が高くなります。

そのため、弁護士に依頼することでお店との交渉を代わりにしてくれ家族や勤務先にバレずに解決できる可能性が高くなります。

7 まとめ

以上で親告罪について、親告罪だった強姦罪が非親告罪の強制性交等罪に改正された例を用いて、違いやそれらの犯罪を犯してしまった場合の対処法について解説してきました。

強制性交等罪は、非常に重い犯罪であり、逮捕されて実刑になる可能性が高いものです。

強制性交等罪を犯してしまった場合には、その後の対応が非常に重要になります。

適切に示談を成立させて、被害者に許してもらうこと、そして心から反省していることを表現することで、早期釈放や、不起訴の獲得、系を軽くしてもらえる可能性があります。

風俗トラブルでお困りごとがございましたら、風俗トラブルに強い弁護士にご相談ください。

関連キーワード