逮捕後の流れ

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

風俗店を利用した際に、お客さんと風俗店でトラブルになっているケースが多発していますが、実際に逮捕されている事例も存在します。1回も逮捕されたことがない人がほとんどだと思いますので、逮捕された後にどうなるのかイメージできない人が多いと思います。

今回の記事では、風俗トラブルで逮捕された場合のその後の流れについて解説します。

1 逮捕とは

逮捕とは、警察官などが、被疑者(罪を犯したと疑われている人)の逃亡や証拠隠滅を防止するため、比較的短時間強制的に身柄を拘束する行為を指します。

これに対して意味が似ていて区別が難しいとされる検挙とは、警察官等が認知した犯罪行為につき、被疑者を取り調べることを意味する言葉ですが、検挙は必ずしも強制的な身柄拘束を意味しない点が逮捕との大きな違いです。すなわち、取り調べに応じないことも可能ですし、外せない予定があるからと別日にしてもらうことや一旦取調べを受け、好きな時に帰ることも可能です。

また、警察などだけができるものではなく、一般の人が逮捕できる場合もあります。

 

2 逮捕の種類

逮捕には「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3種類があります。

⑴通常逮捕

資格を有する司法警察員が裁判官に対して逮捕状の請求を行ない、裁判官から発付された逮捕状に基づき被疑者を逮捕するものです。

 

⑵現行犯逮捕

一方、目の前で犯行が行われていたり、犯行直後だった場合においては逮捕状の発付を待っている時間がないということで逮捕状を必要とせず、逮捕できるというものです。

現行犯逮捕が明らかな誤認逮捕でない限り、そのまま刑事手続きに入っていきます。

更に、警察の到着も待てないようなまさに緊急を要する場合は、一般人の方も逮捕をすることが可能です。これを私人逮捕と言い、現行犯逮捕のみ一般人による私人逮捕が可能となっています。

 

⑶緊急逮捕

事件後の捜査の段階で、容疑者が浮かび上がり、容疑者の自供や確実な証拠が手に入った時点で、逮捕する緊急の必要性がある場合に逮捕状なしに逮捕をすることがあります。これを緊急逮捕と言います。

 

3 逮捕が認められる条件

⑴通常逮捕

通常逮捕を適法に行うには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と逮捕の必要性逮捕状が必要です。

特定の犯罪が存在し、被逮捕者がその犯罪を犯した可能性が高いことが必要となるのです。

逮捕の目的は、被逮捕者の逃亡や証拠隠滅を防止することにあるため、その可能性がない場合にまで、強制的に身体を拘束しておく必要はないとされています。そのため被疑者に逃亡のおそれや証拠隠滅の可能性があれば、逮捕の必要性が認められることになります。

住居不定者、独身者、定職に就いていない者等は、必ずしも一定の場所にとどまる必要がなく、逃亡のおそれが認められやすいとされます。

警察官などが逮捕状を請求し、裁判官が上記の要件を満たすと判断した場合に、適法な通常逮捕となります。

 

⑵現行犯逮捕

現行犯逮捕が適法となる条件は、犯人が犯行中または犯行直後であると認められることです。刑事訴訟法では「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」と規定されており、犯罪と犯人の明白性とされています。

特徴は、警察官のみならず、私人であっても被疑者を逮捕できるということです。

そして、通常逮捕と異なり、逮捕状が必要ありません。

 

⑶緊急逮捕

緊急逮捕が適法となる条件は、①死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯し、②その者が前述の罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること、③急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないことです。これらは、刑事訴訟法に定められています。

①死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁固にあたる罪

これに該当するのは、殺人罪や強盗罪などの重罪です。

②その者が前述の罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること

通常逮捕では「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が要求されていますが、通常逮捕の場合よりも犯人である疑いが強いことが要求されます。

③急速を要し、裁判官の令状を求めることができないこと

被疑者が逃亡もしくは証拠隠滅をしてしまう可能性があるため、逮捕状を裁判官に発付してもらう時間がないことを指します。

逮捕時に逮捕状は不要ですが、逮捕後は直ちに裁判官の逮捕状を求める手続を採らなければなりません。

逮捕の主体は、警察官や検察官です。

 

4 風俗で逮捕される可能性がある行為

⑴風俗での盗撮行為

・迷惑防止条例違反

風俗での盗撮がバレた時に、警察に逮捕される可能性は全くないわけではありません。

逮捕されるかどうかはその状況によって異なります。

デリヘルでの盗撮が刑事事件になる際には、迷惑防止条例違反が考えられます。

迷惑防止条例とは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の略称で、社会一般の人々に著しく迷惑をかける暴力的な行為等を防止して、住民の生活の平穏を守るための法律です。

47都道府県や一部の市町村で制定されており、この迷惑防止条例の中に盗撮に関する規定があります。各都道府県によって条例に書かれている文言は多少異なります。

つまり、風俗での盗撮が迷惑防止条例違反以外等するかどうかは、それぞれの都道府県の迷惑防止条例の内容によって変わってきます。

東京都の迷惑防止条例違反では第5条に「粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止」が定められています。これによって、デリヘルでの盗撮行為は取り締まりの対象とされます。

また大阪府でも迷惑防止条例が改正され、デリヘルの盗撮が条例で規制されることになりました。

東京都迷惑防止条例は「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」と「公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」で下着又は裸体の盗撮を禁止しています。

自宅は、住居に該当し、ラブホテルや風俗店のプレイルーム等は「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」にあたるので、処罰対象になります。

そのため、風俗を利用中に女性スタッフを盗撮する行為は条例違反となります。

また、実際に撮影を行なっていなかったとしても、撮影するためにホテルや自宅内に隠しカメラを設置したり、撮影機器を女性スタッフに向けるだけでも東京都や大阪府などの迷惑防止条例違反に抵触します。

東京都の迷惑防止条例では,以下のように規定されています。

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

なお常習の場合には

2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

すなわち、風俗店での盗撮行為も警察に逮捕されてしまう可能性があります。

ただし、現時点で一部の県では改正がまだされておらず、自宅やホテル、風俗店のプレイルームでの盗撮が規制対象となっていません。

盗撮トラブルを起こしてしまった場合には、その地域の迷惑防止条例を確認する必要があります。

・軽犯罪法

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

引用元:軽犯罪法

軽犯罪法1条には、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は処罰対象であると規定されています。

風俗店のプレイルームやデリヘルを呼んだラブホテルは、基本的に全裸になることが想定されますので、この場所に該当します。

しかし、軽犯罪法では拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)か科料(千円以上1万円未満の金銭罰)という刑罰しか定められておらず、軽い刑になっております。

軽い刑とはいえ、犯罪であることに変わりはなく、被害届が出されると被疑者という扱いにされます。

このケースで逮捕されるのは、定まった住居がないか任意出頭に応じない場合となります。

 

⑵風俗での本番行為

強制性交等罪

本番行為について女性スタッフの同意がなかった場合は、強制性交等罪で犯罪として警察に逮捕される可能性が高くなります。

(強制性交等)

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

引用元:刑法177条

刑法第177条は強姦罪という名称でしたが、平成29年の改正で強制性交等罪に変更になりました。

強制性交等罪が成立するかどうかは、暴行や脅迫の程度によります。

この暴行や脅迫の程度は、最高裁判例で「相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるもの」とされています。

つまり、女性スタッフが抵抗できないくらい、もしくは抵抗するのが非常に難しい程度の暴力や脅迫によって、本番行為を行うと、強制性交等罪が成立するということです。

このような脅迫や暴行の上で、挿入まで至らなかった場合には、未遂罪が成立します。そして、その暴行で女性スタッフが怪我をしたら、刑法第181条2項の強姦致傷罪が成立します。

例えば、「サービスの最中に意図せず滑って挿入してしまった」「本番行為をしたいと依頼したところ無視or断られたが、我慢できずに暴行などは一切せずに挿入してしまった」というパターンもよくありますが、強制性交等罪が成立する条件である脅迫や暴行を満たしていないということになりますので、逮捕されることはありません。

しかし、女性スタッフとの合意のもと本番行為に及んだにも関わらず、サービス後に強引に本番行為を強要されたと主張が変わったり、本番行為をしていないのに、挿入されたとお店に報告されたりというケースもあります。

このようなケースでは冤罪になりかねませんので、お店のルールを守って楽しむべきです。

以上のように、風俗での本番行為は女性スタッフが反抗するのが困難なほどの暴力や脅しをしなければ、逮捕される心配がないことを説明しました。

しかし、重複しますが、女性スタッフにとの主張の食い違いや同意なく無理やりされたと言われてしまえば、冤罪による逮捕の可能性がないとは言えません。

 

5 風俗トラブルの逮捕後の流れ

⑴逮捕

風俗トラブルで被害者からの被害届によって逮捕されるケースというのが多いです。

上で説明した3種類のどの逮捕の種類であっても、警察は逮捕してから48時間以内に、釈放するか検察官に事件を送致します。

この間は、家族であっても面会することができず、弁護士だけが面会をする権利があります。

 

⑵勾留

検察官に事件が送致されると、事件が検察官に来てから24時間以内に検察官が勾留請求するか釈放するかを決定することになります。

検察官は、被疑者を起訴するかどうか、本当に罪を犯したのか、それは処罰に値するのか、どのような刑罰が適切なのかという判断をする必要があります。

勾留請求された場合は、裁判官から被疑者に対して、事件の認否等について質問をする機会が設けられて、その上で裁判官が被疑者を勾留するかどうかの決定します。

現状では、検察官が勾留請求した場合、ほとんどが勾留が認められています。

検察官の操作が終わらないと勾留されることになります。この逮捕後の身体拘束は3日間です。

検察官の請求そして、裁判所の許可で勾留されると少なくとも10日間は身柄を拘束されることになります。

特に強制性交等罪のような風俗トラブルの場合には、被害者との接触のリスクを避けるために勾留が認められやすいケースです。

 

⑶起訴

勾留期間の満期に検察官が起訴か不起訴かの判断をします。

不起訴になると、即刻釈放されます。

しかし、起訴されてしまうと刑事裁判に移り、刑事裁判まで進むと99.9%が有罪となります。

そして、起訴には公判請求と略式起訴の2種類があります。

略式起訴とは、通常の起訴手続きを簡略化した、略式手続きで処分を終わらせる起訴方法で、100万円以下の罰金・科料に相当する事件である場合に利用されます。

簡単にいうと裁判をせずに罰金刑にして刑事手続きを終わらせることです。

略式起訴は、捜査機関にとって、手続きが簡略化することによって、迅速に事件を処理できるというメリットがあります。一方、被疑者も簡略化された手続きで、起訴時点での身柄の拘束も解かれるため、被疑者のメリットも大きくなっています。

一方、懲役刑を求刑する場合には公判請求が行われます。風俗トラブルで強制性交等ざや強制わいせつに該当する事件の場合は、罰金刑が定められていないため、終局処分までの間に示談交渉を成立させて告訴が折り下げられない限り、公判請求になります。

 

⑷被告人

起訴されてしまうと被疑者から被告人へと呼び方が変わります。

被告人勾留は、被疑者勾留と違い、起訴されてから2ヶ月間勾留され、さらに1ヶ月単位で延長できます。

被告人勾留になってから保釈の請求をすることができます。保釈では、保釈保証金を担保にして、身体拘束を解くことができるというものです。

 

⑸公判

刑事裁判が開かれると被告人の有罪か無罪か判決が言い渡されます。そして刑罰が言い渡されます。

 

6 まとめ

以上で、風俗トラブルで逮捕された場合の逮捕後の流れを解説しました。

逮捕や勾留された場合には、時間との勝負になります。

ご自身や家族だけの弁護では、なんとかできない場合が多く非常に難しいです。

ご家族やご自身が風俗トラブルで逮捕された場合には、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

取り調べの受け方や今後の流れをアドバイスしてもらえますし、早期の釈放の可能性もあります。

ぜひお気軽に風俗トラブルに強い弁護士にご相談ください。

 

 

 

関連キーワード