盗撮してしまったー解決するための知識
- コラム
トラブルでご相談いただくときに、多く寄せられる相談中のひとつに「盗撮」があげられます。
スマートフォンの普及などもあり、高性能で小型のカメラはだれでも簡単に用意できることから、近年はサービス中の盗撮が増加傾向にあります。今回は、この盗撮について詳しく解説します。
1 サービス中の盗撮は犯罪なのか
結論から言うと盗撮は犯罪です。しかし、そもそも「盗撮」とは、どういった場合をさすのでしょうか?一般的に、盗撮とは、相手の了解のないまま、裸体や下着姿など羞恥を起こさせる姿を撮影することをさします。しかし、盗撮は刑法に禁止の規定がなく、刑法犯にはなりません。では、なぜ盗撮が処罰されるのか?実は、各自治体が公布する迷惑防止条例と軽犯罪法違反に抵触するので、逮捕されてしまう可能性もあるのです。まず、迷惑防止条例に、盗撮に関する規定があります。47都道府県それぞれですが、例として大阪府の迷惑防止条例の盗撮に関する規定を確認しましょう。
大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
( 卑わいな行為の禁止 )
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。二 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。二 前号に掲げるもののほか、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること
( 前項又は第四項の規定に違反する行為を除く。)。
3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、
次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。
二 みだりに、姿態を撮影すること。
4 何人も、第一項各号又は前項第二号の規定による撮影の目的で、写真機等を人に向け、又は設置してはならない。
条例文には、撮影そのものだけではなく、「撮影機器を相手に向ける・設置する」ことも含まれますので、実際に撮影をしていなくても、みだりにカメラを女性キャストに向けたり、サービスを受ける部屋内に設置するだけで違反したこととなります。また、大阪府迷惑防止条例では、公共の場所以外のプライベートな場所においての盗撮も規制対象としてます。軽犯罪法においては、衣類をつけないでいることが予想される場所で「ひそかにのぞき見た」行為を処罰の対象としています。これはスマホなどで盗撮することも含まれると解釈するため、デリヘルなどのサービス中の盗撮は、この処罰対象になる可能性があります。
軽犯罪法
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
もし、盗撮した動画を有償・無償に関わらず、インターネット上で不特定多数が認識できる状態(SNS に投稿も含む)にした場合、刑法 175 条で規定される「わいせつ物頒布罪・わいせつ物陳列罪」が適用されるケースがあります。実際に、サービスの様子を小型カメラで盗撮し、その動画をインターネットで販売して逮捕されたケースがあります。
刑法第百七十五条
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは
二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を
頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
2 警察に逮捕される可能性
先に解説したわいせつ物頒布罪で実際に逮捕者が出ていますが、盗撮のみ行った場合にも刑事事件にまでなるのでしょうか。結論から言うと盗撮しただけの場合に、すぐ刑事事件になることはないでしょう。トラブルに発展する場合、サービス行為を盗撮したことが女性キャストにバレてしまい、風俗店従業員が呼ばれ、そこで揉め事になることが多いです。そこに警察が呼ばれることもありますが、当事者同士で解決するようにと、示談で解決する場合もあります。示談で解決すれば、そこからさらに刑事事件に発展する可能性は低くなります。警察が介入するケースは、盗撮をした上で、風俗サービスの様子を撮影した動画をばらまくなどと女性キャストを脅迫し、本番行為を迫ったという強制性交等罪が問題になるケースです。さらに女性キャストに怪我をおわせれば、強制性交致傷罪も成立する可能性があります。この様な場合に、女性キャストから被害届が警察に出されると、そこから刑事事件になります。
刑法 177 条 強制性交等罪
暴行又は脅迫を用いて 13 歳以上の者への性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」)、または、13 歳未満の者に性交等をする犯罪である。
刑法 181 条 強制性交等罪
第 176 条、第 178 条 1 若しくは第 179 条 1 の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
そかし、警察は、盗撮事犯を一般的に47都道府県迷惑防止条例等違反で検挙しているので、刑事事件に発展しなくても逮捕される可能性が無いわけではありませんので注意が必要です。ですので、女性キャストや風俗店とトラブルになった場合は、迷わず・すみやかに弁護士に相談することが早期解決へのポイントです。刑事事件化を防ぐためにはスピードと鮮度が重要になってきます。示談を自分でしようとすると、手遅れになったり、後々のトラブルにもつながる恐れがあるので、法律のプロに任せることをお勧めします。
3 店から請求された罰金の支払義務はあるのか
サービス前に利用規約などで盗撮禁止や違反した場合の罰金について説明している店もあります。この罰金請求の支払い義務はあるのでしょうか? 結論として、客に対して罰を科すことは一民間企業の風俗店にはできないはずなので、罰金を請求されたとしても法的な支払義務はありません。しかし注意する点は、これを逆手にとって支払いを無視すれば、女性キャストや風俗店は面白く無いはずです。盗撮が犯罪行為である以上、警察沙汰に発展してさせてしまうのは避けるべきです。女性キャスト・風俗店とトラブルになった場合は、法的に有効な示談を成立させてトラブルを解決しなくてはなりません。そこで示談金も発生しますし、また、盗撮をされた女性キャストが恐怖心を抱き接客サービスを行えなくなった場合には、女性キャストから請求されれば、損害賠償を支払うことになるでしょう。
4 盗撮がバレた時の対処法
4-1 その場で解決しようとして、すぐ罰金を支払わないこと
先に説明した通り、法的にみて風俗店が罰金を請求することはできませんが、違約金・慰謝料の名目で支払いを迫ってくる可能性が高いです。その場合、法外な高額請求をされる場合が多いので注意が必要です。まず、その支払い請求が正当なのか・妥当な金額なのかどうか判断するためにも、速やかに弁護士に連絡をしましょう。
4-2 念書などを強要されても応じないこと
「違約金を支払います」という念書や示談書を突き出され、強面の従業員から迫られれば、その場の窮地を脱するために慌ててサインしてしまうこともあるでしょう。しかし、この場合の書類に記載されていることは、店に有利な条件であったり、法的に無効になるように意図的な不備が隠されていることが多く、後々のトラブルの原因になります。まず、店側には「弁護士に相談する」と伝え、その場しのぎでサインをすることは「しない」が正解です。
4-3 脅迫された場合は弁護士に相談すること
トラブルになった際に、個人情報 ( 本名・住所・電話番号・勤務先 ) を知られていると、「家族にバラすぞ」「勤務先に知らせるから」などの類いのことを言われ、すぐに罰金請求に応じてしまったりするケースも多いですが、この類の店側の発言は、脅迫にあたり脅迫罪が成立する場合があります。もちろんこれも犯罪ですので、その場合、弁護士が示談する際に交渉の一部に盛り込むことができます。
4-4 暴力をふるわれたら証拠を残すこと
万が一、店の従業員らから暴力をふるわれた場合は、怪我をした場所の写真を撮る・病院に行き診断書を出してもらうなど証拠を必ず残しましょう。怪我だけにかかわらず、精神的なダメージも含まれます。証拠を残しておけば、後々の示談交渉や警察からの事情聴取の際に有効な証拠として提出することができます。
5 まとめ
ここまで、盗撮に関するトラブルを解決するための知識について述べてきました。大事なことは、盗撮してしまった場合は、速やかに弁護士に相談することです。いつ警察が訪れるかと不安な毎日を送るのは、精神的にもよく無いことです。ある日突然逮捕されてしまった…という手遅れの状態にならないためにも、重要なことです。
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