盗撮を行った場合の慰謝料相場

グランシエル法律事務所

あいりす大阪法律事務所

  • コラム

風俗店とのトラブル事例において、本番トラブルに次いで多いお問い合わせは、風俗·デリヘルでのサービス利用中に盗撮をしてしまったというものです。このような風俗トラブルとなった場合、風俗店から損害賠償の請求や示談書へのサインを要求されることがあり、「指示に従ってしまった。」「どうすればいいか悩んでいる。」というケースがあるでしょう。

今回は、風俗店で盗撮をしてしまったケースの慰謝料の相場について解説します。

風俗トラブルになってしまった場合は、以下を参考にして頂き、まず示談について弁護士に相談する事が必要です。

1 問題となったケース

実際にご依頼いただいたケースでは、大阪市の日本橋にあるラブホテルにデリヘル嬢を呼び、サービスを受けていた際に、カバンに入れていた携帯電話でそのサービスの様子を一部始終撮影していました。

そして、サービス終了後に盗撮行為がデリヘル嬢にバレてしまい、すぐさまデリヘル嬢がお店に連絡し、かけつけたお店のスタッフに、「盗撮はれっきとした犯罪だ。警察に通報されたくなかったら罰金として100万円を支払え。」と要求され、身分証の控えを取られたうえで書面にて支払約束をしてしまいました。その後に、ご不安になられて弊所にご相談に来られた、というものでした。

 

2 盗撮行為に対する刑事罰

⑴迷惑防止条例違反

迷惑防止条例とは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の略称で、社会一般の人々に著しく迷惑をかける暴力的な行為等を防止して、住民の生活の平穏を守るための法律です。

47都道府県や一部の市町村で制定されており、この迷惑防止条例の中に盗撮に関する規定があります。

各都道府県によって条例に書かれている文言は多少異なりますが、大阪府では公共の場所や、不特定多数の者が出入りする場所での盗撮行為を禁止しており、これに違反すれば、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

⑵軽犯罪法

軽犯罪法第1条は「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。」とした上で、同条23号において、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」と定めています。

風俗店の部屋やホテルは、基本的に全裸になる事が想定されます。「ひそかにのぞき見た」とは、単に目視するだけではなく、スマホや隠しカメラなどで盗撮することも含まれると解釈されるため、風俗での盗撮行為はこの「窃視の罪」に当たる可能性があります。

窃視罪の刑罰は「拘留」として1日以上30日未満の身柄拘束、または1000円以上1万円未満の「科料」に処せられます。

⑶建造物侵入罪

刑法130条は、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

上記の「侵入」とは、「住所や建造物などの管理者の意思に反する立ち入り」をいうと考えられていますが、盗撮行為を目的とする立ち入りも当然管理者の意思に反するものといえますし、正当な理由も認められないでしょう。

したがって、ホテルや店舗型風俗を利用した場合でも、盗撮行為を目的として立ち入りを行えば、建造物侵入罪として逮捕される恐れはありますが、しかし、他人の性行為の盗撮を目的としていない限り、違法性が低く建造履侵入罪で逮捕されることは考えにくいです。

 

3 盗撮を行った場合の慰謝料の相場

盗撮されたショック、精神的ダメージにより被害者女性が休んだり、やめてしまうこともあります。それによって生じるお店の売上の減少については、請求されても支払う必要はありません。

しかし、女性が盗撮されたことでトラウマになったり、男性恐怖症になり、男性への接客ができなくなった場合には、被害者女性に対して、休業損害を支払う必要が出てきます。

また、その際に暴行を働いてしまったりして、怪我をさせた場合には、治療費·通院交通費·入院費などの財産的損害も賠償する必要があります。さらに、風俗嬢はサービスを盗撮されただけでも不快な気持ちを強く抱くのはもちろんのこと、今日のインターネットの発達を鑑みれば、画像や動画の流出に対して恐怖心でいっぱいになることは当然です。

以上のことに加えて、初犯か常習犯なのかといった悪質性、トラブル後の反省や謝罪の有無、被害者女性が加害者に対してどれほど強い処罰感情があるかといったお互い事情が重要な要素になります。

 

これらを踏まえて、風俗トラブルにおいての慰謝料の相場は、10万円から30万円です。加害者が事件を穏便に済ませるために、これより高額の慰謝料に同意する場合もあり、ネット上に動画をアップロードしている場合など慰謝料が100万円を超えるケースもあります。

 

4 まとめ

風俗サービスでの盗撮行為は、迷惑防止条例違反、軽犯罪法、建造物侵入罪に該当します。これら刑事事件に発展させることを防ぐために支払う慰謝料の相場としては、既出のように10万円〜30万円ですが、悪質性、事件の様態、被害者女性は被った被害等、双方の事情が影響してきます。

支払う必要のない金額を支払うことになる前に、適切な慰謝料で穏便に済ませるためにも是非一度弁護士にご相談ください。

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